〇〇〇〇〇なら肉は食べるな

「健康ためには赤みの肉は最小限に!」と言われています。最近のメタアナリシスにより赤みの肉をひかえると死亡率が下がることが示されましたが、「大人は現在の赤みの肉の消費を続ける」と結論しています [Ref. 1] 。矛盾していないでしょうか?メタアナリシスですのでもちろん統計学的には強いのですが、食事についての観察研究は問題だらけです [注1] 。食べるということは化学物質を摂取することではなくて、社会経済状況や育ち、健康志向の度合いなど様々な要素が含まれているのです。赤みの肉がわずかに死亡率を増加させるという(観察研究であるがゆえの因果関係が不確かな)結果が出ても、中立的な結論しか出せないのです。唯一のランダム化比較試験では、脂肪摂取の制限により虚血性心疾患や脳卒中の発症率に差はありませんでした [Ref. 2] 。「〇〇〇〇〇なら肉は食べるな」とえらく強い口調で言われます(攻撃的と感じるのは被害妄想でしょうか?)。今、言えるのは赤みの肉が悪いというエビデンスは無いに等しいということだけです。

 

注1:F. Perry Wilson, MDによる解説記事を参考にしました。

https://www.medscape.com/viewarticle/919507?nlid=132051_405&src=WNL_mdplsfeat_191015_mscpedit_neur&uac=207514FV&spon=26&impID=2131700&faf=1

Ref. 1: Johnston BC, Zeraatkar D, Han MA, Vernooij RWM, Valli C, El Dib R, Marshall C, Stover PJ, Fairweather-Taitt S, Wójcik G, Bhatia F, de Souza R, Brotons C, Meerpohl JJ, Patel CJ, Djulbegovic B, Alonso-Coello P, Bala MM, Guyatt GH. Unprocessed Red Meat and Processed Meat Consumption: Dietary Guideline Recommendations From the Nutritional Recommendations (NutriRECS) Consortium. Ann Intern Med 2019 Oct 1. [Epub ahead of print]

Ref. 2: Howard BV, Van Horn L, Hsia J, Manson JE, Stefanick ML, Wassertheil-Smoller S, Kuller LH, LaCroix AZ, Langer RD, Lasser NL, Lewis CE, Limacher MC, Margolis KL, Mysiw WJ, Ockene JK, Parker LM, Perri MG, Phillips L, Prentice RL, Robbins J, Rossouw JE, Sarto GE, Schatz IJ, Snetselaar LG, Stevens VJ, Tinker LF, Trevisan M, Vitolins MZ, Anderson GL, Assaf AR, Bassford T, Beresford SA, Black HR, Brunner RL, Brzyski RG, Caan B, Chlebowski RT, Gass M, Granek I, Greenland P, Hays J, Heber D, Heiss G, Hendrix SL, Hubbell FA, Johnson KC, Kotchen JM. Low-fat dietary pattern and risk of cardiovascular disease: the Women's Health Initiative Randomized Controlled Dietary Modification Trial. JAMA 2006;295:655-666.

 

脳の健康のために (1) 脳を疲れさせない

マインドフルネス瞑想は、デフォルト•モード•ネットワークの暴走にブレーキをかけ、脳がむだに疲れないようにしてくれるので、脳の休息法としてオススメです。ヨガには心血管系疾患の発症リスクを減少させる効果が顕著でした。楽天家には心理的な利点が多いので、楽天であると長生きすることが示されています。眠っている間に意識の解毒と回復を行なうための活動が夢の役目です。睡眠に関してもっとも重要なことは「最初の90分」をしっかり深く眠ることで、良質の睡眠をえることです。睡眠の質が悪いと認知症になりやすいと言われています。睡眠不足と密接に関連するものとして長時間労働があり、長時間座ったままで仕事をしているなど身体活動度の低下脳卒中のリスクとなります。長時間労働では過度の飲酒(明らかな脳卒中リスク)となる傾向も指摘されています。睡眠薬を服用すると認知症発症リスクが増すという報告もあります。

 

よく食って、よく眠って(いい夢みろよ!)、ただ、待っているだけでなく、マインドフルネス瞑想やヨガを行ない、長時間労働と過度の飲酒を避けて、脳を疲れさせないことが楽天ポイントを貯める上で重要です。

脳の健康のために (2) 健康的な食事

てっとりばやく体重を減らそうとするなら糖質制限が効果的ですが、長い目でみたら地中海食の方が良さそうです。オリーブオイルやナッツ、果物と野菜が多く、魚や鳥肉が多い一方では赤身の肉や加工肉が少なく(加工肉が少ないと減塩にもなります)、炭水化物はなるべく精製しないものを食する地中海食に準じた食事の有益性(心血管性疾患、特に脳卒中の減少)が示されています。地中海食など「健康的な食事」では脳萎縮が抑制されていました。植物性タンパク質脳梗塞が、動物性タンパク質脳出血が減少します。を毎日1個食べると、脳出血のリスクが減少するという報告もあり、1日1個くらいの卵は食べてよいのではないでしょうか。多価不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸やリノール酸)が多いと脳梗塞が減少するという報告があるものの、他の多くの結果は一致した結論を示していません。精製した白い炭水化物は体に悪いが、精製されていない茶色い炭水化物は食物繊維や栄養成分が豊富で、健康に(特に動脈硬化を抑制して)良いと考えられています。人工甘味料を加えた飲料の摂取が多いと脳梗塞アルツハイマー病のリスクはともに3倍弱まで上昇していました。人工甘味料は危険です。精製された糖質はインスリンの過剰をもたらし、過剰なインスリンは「食べるのをやめさせるホルモン」レプチンの働きをさまたげ、満たされない空腹感をもたらします。このようにして脳が食物依存症となっていくのです。依存症ですから、意志の力は無力です。食物依存の感受性が高いヒトにとって、ダイエットとはシンドイ脳の問題であると肝に銘じる必要があります。

 

野菜や果物を多く食べた方が良いのは間違いないようですが、野菜と果物だけ食べておけば大丈夫ではなく、野菜と果物が不足しているヒトは要注意ということです。健康のためには、良い食生活習慣を上乗せするよりも、(往々にして見て見ないふりをしている)悪い食生活習慣を修正することが大事です。抗酸化物質の摂取(サプリ)による心血管疾患予防や認知機能低下抑制効果はほぼ皆無でした。食品に含まれる成分に惑わされるなということでしょう。唐辛子(特に生唐辛子)により総死亡率と特定疾患(癌や虚血性心疾患、呼吸器疾患)による死亡が減少するということが示されています。確かにチョコレートには脳卒中を予防する効果があるようですが、高血圧などの強力な危険因子を持っているヒトはそちらを先に片づけておいた方がいいでしょう。チョコレートは薬ではありません。コーヒーを多く飲む群(1日2-3杯以上)では、全死亡は約2割減少していました。ランダム化比較試験はまず不可能ですが、コーヒーは明らかに健康に良いようです。

 

(脳の)健康に良い食事はどのようなものか(科学的に証明されたというより、観察研究によるものが多いので)既に「わかっちゃいるけど」くらいの状況です。問題はどのようにして(脳の)健康に良い食事を実行するのかです。それとも不健康な食生活をやめた方が効果的であることは「わかっちゃいる」ことなのでしょうか。

脳の健康のために (3) 血管危険因子の管理

多量飲酒では海馬が萎縮し、節度ある適度な飲酒なら脳に良い(脳萎縮が軽い)ということはありませんでした。1日に20本喫煙した場合の(虚血性心疾患や脳卒中の)リスク増大分の40〜50%相当が、たった1日1本の喫煙で生じるので、タバコは本数が少なくても危険です。受動喫煙では全死亡と心血管系死亡(特に脳卒中)が増加し、副流煙によって認知機能障害が起こることも報告されています。

 

食塩摂取量、肥満、糖尿病、メタボ、慢性腎臓病、飲酒、喫煙、睡眠、運動習慣など様々な要素が絡まりあって高血圧という診断となっているのです。何も考えずに降圧薬を服用して、血圧値だけ下がればよいという単純なものではありません。家庭血圧を測定しないで高血圧の診断をつけてはいけませんし、家庭血圧を測定せずに降圧療法を開始してもいけません。家庭血圧測定は必須!です。白衣性高血圧により心血管疾患発症リスクは上昇します。白衣性高血圧のヒトは降圧治療するか否かにかかわらず、直ちに「食生活の改善、運動、減量、飲酒を減らす、禁煙」などに取り組むべきです。食塩摂取が多いと心血管系疾患(特に脳卒中)が直線的に増加します。減塩目標が厳しくなっているのに、いまだに日本人の塩分摂取量は1日男性14 g、女性11.8 gという結果もあり、日本は減塩後進国と言うしかありません。歳をとると多くのヒトは高血圧となり、老年期に高血圧があると脳卒中になりやすく、歳をとって血圧が下がったら下がったで、認知症になっているというこみいった関係が高血圧と脳にはあります。高血圧がもたらすのは(アルツハイマー病ではなくて)脳小血管病であり、40歳ころから定期的な血圧測定をする必要があります。厳格な降圧療法は悪くないということですが、リスクがさし迫ったものでないなら、減塩や肥満の解消、有酸素運動など、薬を飲む前にすることが(たくさん)あります。でも降圧薬が必要なヒトはきちんと服薬しましょう。

 

もちろん禁煙、血管危険因子の管理(特に高血圧のコントロール)、減塩や肥満の解消、有酸素運動など、脳の健康のためにすることが(たくさん)あります。

脳の健康のために (4) 脳の潜在性病変にまつわる話

無症候性脳梗塞はおおざっぱに言って、60歳代では10人に1人、80歳代では10人に3人ほど見つかります。無症候性脳梗塞の危険因子としては高血圧が主なもので、ほかに糖尿病や慢性腎臓病、飲酒、喫煙などがあり、一般的な脳卒中の危険因子と同じです。潜在性脳梗塞があると(脳卒中のみならず)将来的に認知症になりやすいので、予防対策が必要です。生殖活動に関連した生物学的特性によって女性は脳梗塞から保護されていますが、最終出産年齢は高いほど潜在性脳梗塞が多くなる傾向がありました。つまり多産は良いが、高齢出産は良くないということです。メタボリックシンドロームとは、たまった内臓脂肪(中心性肥満)から分泌される物質によりインスリン抵抗性が引き起こされ、虚血性心疾患や脳卒中などの原因となるものです。メタボリックシンドロームと炎症は、大きめの深部白質病変を引き起こす危険因子でもあります。高血圧を主な危険因子とし、広汎な白質病変と多発性ラクナ梗塞の合併を特徴とするビンスワンガー病は、脳血管性認知症のプロトタイプです。

 

実際は、症状を出す脳卒中より、(MRIにより初めて見つかる)潜在性虚血病変の方がはるかに多いのです。MRI健診によって、脳卒中予防対策を考えていきましょう!

脳の健康のために (5) アパシー、生活不活発病、認知的フレイル

認知機能障害や感情的動揺、意識障害などによらない(特に原因がハッキリしない)やる気の低下アパシーと言います。「できるけどやらない」状態(アパシー)が続くと、次第に脳の機能が衰えて認知機能障害の状態、つまり「やりたくてもできない」状態となるので、高齢者のアパシーは過小評価すべきではありません。毎日の生活が不活発になってくると、非常に多くの心身のはたらきが少しずつ低下し、「生活動作の不自由さ、やりにくさ」が出てくる、生活不活発病となります。「動かない」とヒトは病むのです。フレイルと軽度の認知機能低下があると認知症発症リスクが急上昇することが示されており、認知的フレイルの概念として注目されています。身体面の問題(フレイル)のため、動かないでいると、動けなくなって、ヒトは病むのです。認知症予防のためには、脳トレのみでなく、筋トレ有酸素運動などからだを鍛えることが大事です。有酸素運動によって(本来年とともに萎縮するはずの)海馬が逆に大きくなるというランダム化比較試験があります。

 

「動かない」とヒトは病むので、動けるからだにしておかなくてはなりません。動けるからだがあっても、何もしないでいると、「やりたくてもできなく」なってしまうので、やりたいことがなくなることを心配しましょう。

脳の健康のために (6) 認知症の予防

高齢者の人口が増加しつづける社会では、当然のように認知症患者の数(有病率)は増加しますが、認知症の発症率は減少しているという報告があります。認知症の発症率が減っていれば、認知症の予防ができている(もしくは予防可能性がある)ということです。認知症発症のリスク要因として、人種や遺伝的素因ではなく社会経済状況が強い影響を及ぼしていて、これは一種のマタイ効果と言えるのではないでしょうか。アミロイドはアルツハイマー病が発症する15年ほど前から脳に沈着し始めます。アミロイドに対するモノクローナル抗体を投与して、脳内のアミロイドを除去することができれば、アルツハイマー病の発症を抑えることができるはずです。しかし、モノクローナル抗体によるアルツハイマー病の治療は今のところ期待ハズレです。脳を鍛えるエクササイズ「脳トレ」が認知症を予防するかについては一致した見解はありません(が、知的な活動に従事するのは良いのではないでしょうか)。店頭で売られているサプリは認知症を予防するかについては、全く効果なしです。サウナに頻回に入るヒトには心臓突然死や虚血性心疾患が少ないことが知られていますが、サウナによって認知症も予防ができるかもしれないという報告があります。難聴があると認知症のリスクが高くなります。脳微小出血は、大脳皮質領域にみとめられるアルツハイマー病やアミロイドアンギオパチーとの関連が強いものと、大脳深部や小脳/脳幹にみとめられる脳小血管病(動脈硬化)によるものとに大別されます。全ゲノムでのSNPs解析から算出した遺伝的背景やアポリポプロテインε4遺伝子は、それがあると絶対発症するという原因遺伝子ではなく、発症リスクを少しだけ上げる危険因子です。近親者に認知症のヒトがいるからといって、過剰に心配する必要はありません。それよりも脳の健康に良い生活習慣に心がけましょう!

 

教育・難聴への対策・高血圧のコントロール・肥満(メタボも)の解消・(もちろん)禁煙・うつにならない/ 脳を疲れさせない・身体からだを動かす・社会から孤立しない・糖尿病の治療など、認知症の危険因子を制御することで認知症は(無くしてしまうことはできませんが)予防できます。