認知症発症におけるマタイ効果—社会経済的不均衡

社会経済状況(収入や教育)における格差は、脳卒中や認知症といった「脳の健康」にも悪影響を及ぼしていて、一種の「マタイ効果」—持てる者はさらに与えられ、持たざる者は(そのわずかな)所有物をも奪われる—と言えるのではないでしょうか。 受けた教育や…

スパイスは長生きの素

これまでに(2015年までに)分かっていること—スパイスとその主要活性物質が健康に良いことが実験や小規模の集団を対象とした研究で報告されています。スパイス消費量と死亡率に関する前向き試験は(その時点で [注1] )ありませんでした。 中国で行われた…

「脳の健康」の最適化について

健康で長生きするためには脳の働きが保たれていること—脳の健康状態が良いこと—が必須です。健康な脳とは、まず血管性病変や変性疾患—脳卒中やアルツハイマー病など—がない状態でしょう。高血圧や糖尿病、肥満、身体活動度低下、喫煙、うつなどの危険因子が…

サウナは認知症を予防する!?

伝統的なフィンランドのサウナは、80〜100℃と高温で、湿度は10〜20%と乾燥していて、時に熱した岩に水をかけて湿度を上昇させるといったものです。サウナに頻回に入るヒトには心臓突然死や死亡に至る虚血性心疾患と心血管系疾患が少ないことが報告されていま…

主観的なもの忘れ—認知症の「最初の一歩」なのか?

最近のメタアナリシスから「主観的なもの忘れがある健常高齢者の25%は4年以内にアルツハイマー病がらみの軽度認知障害となり、認知症となるリスクも2倍」と報告されています [Ref. 1] 。「主観的なもの忘れ」がある認知機能正常な高齢者の脳の中では何が起…

有酸素運動によって海馬が大きくなり、記憶力は改善する

「体を動かすと認知機能が改善し、認知症になりにくい」ことが多くの観察研究から示唆されています。より因果関係をはっきりさせるためにランダム化比較試験も行われています。しかしながら、「身体活動は認知機能低下やアルツハイマー型認知症を予防するか…

店頭で売られているサプリは認知症を予防するか?

結論—全く効果はない。以上! もう少し丁寧に語ってみると、最新の系統的文献検索(システマテイックレビュー)[Ref. 1] によると「店頭で売られているサプリ [注1] は認知機能低下や軽度認知機能低下、アルツハイマー型認知症の予防において ”little or no…

脳トレは有効か?

脳を鍛えるエクササイズ「脳トレ」が認知症を予防するかについては一致した見解はありません [Ref. 1] 。認知症になってしまうと脳トレは効果がないようですが、問題は認知症までいたってない—が、認知症になりそうな—ヒトに脳トレによる予防効果があるか(…

なぜ統計学が最強の学問であるのか?

西内の本 [注1] から盛大に引用します。 なぜ統計学が最強の学問であるのか?その理由は、「人間の制御しうる何物についても、その因果関係 [注2] を分析できるから」であり、この統計学の汎用性は、どのようなことの因果関係も科学的に検証可能なランダム…

飲酒と脳卒中

医学情報のエビデンスを手っ取り早く得るために皆がしているのは、メタアナリシスを探すことです。メタアナリシスは、系統的文献検索(システマテイックレビュー)を定量化したもので、エビデンスレベルは高くなります。もちろん「飲酒と脳卒中」に関しても…

血圧を下げすぎてきつくはないか?

血圧が130/80 mmHg以上なら高血圧とする—と基準は厳しくなってきています。これは脳卒中の既往や糖尿病のない高齢高血圧患者の収縮期血圧を厳格に(120 mmHg以下を目標)コントロールすると、標準治療よりも心血管疾患の発症率や死亡率が低下したというラン…

飲酒は適量でも脳に悪い(良くはない!)

「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約20g程度 [注1] —という目安が示されています。しかしながら「適度な飲酒なら脳に良い」とは限りません。 30年という長期間追跡している英国の一般住民の集団から、ランダムに550人(平均年齢43歳、…

副流煙による認知機能障害

ニコチンの代謝産物である(血液中や唾液中、尿中の)コチニンは喫煙者と非喫煙者を判別するもっとも良い指標です。非喫煙者においては、唾液中コチニン濃度は最近の(コチニンの半減期は16-25時間)受動喫煙の程度を反映します。 英国の一般住民からランダ…

コーヒーはヒトの健康にどう影響するのか2

大規模な観察研究から、コーヒーは(明らかに)健康に良い—コーヒー消費量と全死亡もしくは疾患別死亡の減少が相関する—ことが示されていますが、多くは白人での成績です。 多人種/多民族からなる集団 [注1] で、健康—全死亡と疾患別死亡—に及ぼすコーヒー…

コーヒーはヒトの健康にどう影響するのか

コーヒーには健康に良い面と悪い面の両方がある いくら健康に良い面があっても、飲み過ぎは体に毒 どこからが飲み過ぎでどこまでが適量かは人ごとに異なる この三カ条はコーヒーに限らず、健康を考えるときすべてに当てはまる原則 [注1] であろう。 ヨーロ…

受動喫煙によって死亡率はかなり増加する

受動喫煙対策に関する岩田のコメントを盛大に引用する—(屋外まで禁煙にしようという受動喫煙対策失敗の)理由は簡単だ。受動喫煙の健康被害の質の高いエビデンスは屋内での喫煙に関してのみで、その被害は家庭や職場、レストランやバーだからだ。外での喫煙…

睡眠薬を服用すると認知症になる!?

不眠症の治療や抗不安薬としてベンゾジアゼピン系の薬(睡眠薬)が使われることが多かった。高齢者が長期間(不必要に)睡眠薬を服用すると認知症のリスクが高くなると言われているが、一致した見解には達していない。 睡眠薬の使用が認知症の原因となりうる…

認知症は減少している?!

フラミンガム研究では認知症の「発症率」は近年減少傾向を示していた。その理由は明らかではないが、認知症減少は、「高校卒業以上」の教育歴を持つものに限られていた [Ref. 1] 。英国でも認知症有病率の減少が報告されている [Ref. 2] 。 米国の一般住民に…

認知症の危険因子としての食後高血糖

私たちはなぜ空腹(断食)の状態で血液検査を受けるのだろうか?欧州動脈硬化学会と欧州臨床化学・臨床検査連盟は、通常の脂質検査(採血)は空腹時に行なう必要はないというコメントを発表した [Ref. 1] 。その推奨項目はきわめて簡潔な表にまとめられてい…

腎臓と脳と認知機能

腎臓は体内の老廃物を尿として排出する以外にも実に多彩な機能を持ち、「人体ネットワーク」の要の役割を果たしている [注1] 。最近、腎臓は脳の働きにも影響を及ぼすことが明らかとなり、注目されている。 一般住民560人(女性が60%、平均年齢72歳)の脳MR…

認知機能低下に関与する睡眠障害

2日間徹夜すると「注意力」や「集中力」は急激に低下する。6時間くらい眠れば大丈夫だと思っていても、「6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜したのとほぼ同じ状態」であるという。わずかな睡眠不足が、まるで借金のようにじわじわ積み重なる「睡眠負…

教育と脳

大島潜居となった西郷吉之助はこの機会に書物を読むことにした。書物を読みすぎると何事に対しても決断できず「迷ってばかりいる人間になる」のではないかと大久保一蔵は心配したが、大久保の父次右衛門は次のように述べた。「そげん人間は、もともとぐずな…

ゆるやかな糖質制限によるダイエット

ダイエットとは(脂質を減らすことによる)カロリー制限のことと思い込んでいたが、それは「神話」でしかなかった。体重の適正化や糖尿病のコントロールには「糖質制限」がもっとも効果的であり、山田は「ゆるやかな糖質制限=ロカボが人類を救う」と主張し…

地中海食は高齢者の認知機能を改善する

スペインで行われた研究 [注1] では、地中海食は有害事象の減少—特に脳卒中予防—に効果があった [Ref. 1] 。 この大規模研究の一部を用いて、地中海食の認知機能に及ぼす効果が検討された [Ref. 2] 。複数の血管危険因子をもつ「ハイリスク」の447名(55歳…

最も健康に良いスポーツ種目は?

若い時(19から29歳ごろ)にテニスをしていたヒトは、その後の人生で心筋梗塞となることが少ない [Ref. 1] 。テニスは中年期以降も続けることが多く、比較的強度のある有酸素運動であることがその主な理由であろう。 どのスポーツ種目が健康に良いのか? 英…

老化は足から

「足が衰える」ことは、単にからだだけの問題ではなくて、脳の働きにも関係している。からだの問題としては、たとえば糖尿病や大脳白質病変があると歩行速度が遅くなることが観察されている [Ref. 1] 。さらに、足し算をしながら歩くという「二重課題歩行」…

アルツハイマー病のバイオマーカーとしての脳アミロイド沈着

アルツハイマー病の確立されたバイオマーカーである「脳アミロイド沈着」を、アミロイドPETを用いて検出できる時代になった [注1] 。 複数回アミロイドPET(初回から最後まで1.3年 [中央値])を検査した260例(認知機能正常205例、軽度認知機能障害/アルツ…

血管性認知症もしくはビンスワンガー病について

CTと比べるとMRIでは大脳白質病変ははるかに明瞭に描出できるようになった。大脳白質病変があると認知機能が障害され、広汎な白質病変を特徴とする血管性認知症はビンスワンガー病と呼ばれている [注1] 。 ビンスワンガー病の特徴は—広汎な白質病変に加えて…

動かないからボケるのか、ボケたから動かないのか?

身体活動度が高い(からだをよく動かす)ヒトは認知症になりにくいと言われている。しかしながら逆に、認知症になった(なりかけた)状態だからこそ、からだを動かさないのかもしれない。 35歳から55歳までの一般住民10,308人を28年間追跡し、身体活動度と認…

最近評判の良い地中海食

地中海食とは、オリーブオイル・果物・ナッツ・野菜・穀類を多量に、魚・鶏肉を比較的多く、乳製品・赤みの肉・加工した肉・甘いものを少なくし、料理と一緒に適量のワインを摂取する食事である。 糖尿病もしくは少なくとも3つの危険因子をもつ7447名(55歳…