コーヒーは脳の健康にどう影響するのか2

ヨーロッパの10カ国で、健康—全死亡と疾患別死亡—に及ぼすコーヒーの影響について、451,743人を平均16.4年追跡調査した報告があります[Ref. 1] 。コーヒーを多く飲む群(多い方からの4分位)では、全死亡は1割ほど減少していました [注1] 。意外なことに…

トマトが脳卒中を減らす?

リコピンはトマトに多く含まれるカロテノイドで、強力な抗酸化作用[注1] を持っています。この抗酸化作用のためリコピンは動脈硬化や心血管系疾患を予防すると考えられています。比較的最近、フィンランドでリコピンなどの抗酸化物質の血中濃度と脳卒中リス…

脳卒中にならない食事

脳卒中予防のための食事に関する時宜を得た論評がStroke誌2017年10月号に出ています[Ref. 1] 。13の観察研究と1つのランダム化比較試験のメタアナリシスの結果から地中海食に準じた食事によって脳卒中発症のリスクが約30%減少することが示されました。果物や…

地中海食で脳の萎縮をくい止める

地中海食や同様の「健康に良い食事」が脳萎縮を軽減するという報告があります[Ref. 1-4] 。地中海食スコアにより評価した「地中海食」により灰白質も白質も容積が大きく、この効果は主として多い魚の摂取量と少ない肉の摂取量によるとした論文(断面調査)[R…

偶然見つかる脳の微小出血

脳微小出血が実はかなり有害なものであると強調されてきたのは2009年ごろからではなかったかと記憶しています。それまでは高齢者の数パーセントに偶然見つかるどちらかというと無害なものとされていましたが、最近では認知機能低下にも強く関与することが示…

高血圧がアルツハイマー病の原因?

高血圧の治療をランダム化すると、対照群(未治療群)で必ず脳卒中が増加するのでランダム化比較試験は承認されません。ランダム化比較試験ができない状況下では高血圧が認知症の原因となるかどうかを明らかにすることはできません[Ref. 1] 。ここで古典的な…

なぜ統計学が最強の学問なのか?

なぜ統計学が最強の学問であるのか?西内さんの本[注1] から盛大に引用します。その理由は、「人間の制御しうる何物についても、その因果関係[注2] を分析できるから」であり、この統計学の汎用性は、どのようなことの因果関係も科学的に検証可能なランダム…

認知症になりやすい遺伝子を持っているか知っておいた方が良いのか?

認知症のリスクを高くする遺伝子—アポリポプロテインε4遺伝子—検査を日常診療に取り入れるべきなのでしょうか。取り入れた方が医療者のみならず、患者(被験者)にとっても良いことなのでしょうか?この問題提起に対して論じた論文があります[Ref. 1] 。医療…

教育と脳

大島潜居となった西郷吉之助はこの機会に書物を読むことにしました。書物を読みすぎると何事に対しても決断できず「迷ってばかりいる人間になる」のではないかと大久保一蔵は心配しましたが、大久保の父次右衛門は次のように述べたそうです。「そげん人間は…

野菜と果物と脳の健康

野菜や果物を多く食べると健康に良いと一般的に信じられています。高所得から低所得までを含む18カ国、35から70歳までの135,335人を平均7.4年追跡した観察研究があります[Ref. 1] 。果物や野菜、豆などの摂取量が多いと総死亡率と心血管疾患以外による死亡率…

メタボリックシンドロームと炎症と動脈硬化

つまめる脂肪—皮下脂肪—はそれほど悪くなく、つまめない脂肪—内臓脂肪—が悪いことがわかってきました。内臓脂肪の増加はインスリン抵抗性[注1] を引き起こし、虚血性心疾患や脳卒中などの原因となります。内臓脂肪の増加による中心性肥満を主たる病態とする…

睡眠障害と認知症

ぐっすり眠ることが大事なことは直感的に理解できます。睡眠不足は生活の質をそこない、肥満や高血圧、心血管系疾患など生活習慣病になりやすくします。最高の睡眠にとってもっとも重要なことは「最初の90分」をしっかり深く眠ることがです。「最初の90分」…

地中海食は脳卒中を予防する—観察研究

英国で行われた観察研究でも地中海食の脳卒中予防効果がみとめられています。40歳から79歳までの一般住民23,232人を17.0年間追跡し、地中海食スコア[注1] と脳卒中発症の関連をコックス比例ハザードモデル[注2] により解析しています。その結果、地中海食…

健康的な食事による海馬萎縮の防止

10,308人のコホートからランダムに選択した550人(最終解析は459人)について、半定量的食事質問票により食事の「健康度」を評価し、約11年後の海馬容積をMRIにより定量化しています[Ref. 1] 。食事スコアが1標準偏差「よくなる」毎に海馬容積は92.5 mm3(…

アミロイドβ抗体によるアルツハイマー病の治療

アミロイドはアルツハイマー病が発症するかなり前から脳内に沈着し始め、その後の病気進展のきっかけとなります。したがってアミロイドに対するモノクローナル抗体を投与して、脳内のアミロイドを除去すれば、アルツハイマー病の発症を抑えることができると…

見つけてはいけない

磁気共鳴血管造影による非破裂動脈瘤 [注1]のスクリーニングを一般住民において行なうことは現状では正当化されません。その理由として、(1)一般住民を磁気共鳴血管造影によりスクリーニングすれば約2%に動脈瘤が発見されますが、クモ膜下出血の発症頻度…

家庭血圧測定が役に立つ というか必須

近年では高血圧の診断および治療を決定する前に家庭血圧を測定することになっています。治療開始の決定や降圧剤の増減の判断のためには、1日2回、4-7日の家庭血圧測定が必要ですが、長期間の観察には週に1-2回の測定で十分でしょう[Ref. 1] 。家庭血圧は起…

瞑想とヨガと心血管系疾患

まず、アメリカ心臓協会の学術的見解として「瞑想によって心血管系疾患が減少するか」について14ページ(引用文献数131)もの論文[Ref. 1] にまとめてあることに驚きました。「瞑想」だけでこれだけ書くか(書けるのか)!?ということです。様々なタイプの…

ビンスワンガー病について

ビンスワンガー病というのは広汎な白質病変が特徴的で、多発性のラクナ梗塞を伴う血管性認知症の一種です。白質病変とラクナ梗塞の組み合わせということでは、血管性認知症もしくは血管性認知障害の典型的な病型とも言えます。自験例を提示します。この症例…

片頭痛と脳卒中

今年(2018年)6月にサンフランシスコで開催されたアメリカ頭痛学会での片頭痛に関する話題が紹介されています[注1] 。その中には、並存する健康問題からみて片頭痛が明確な8つ亜群に分類できること、ひどい症状の回数や薬の使用過多、慢性の片頭痛、前兆…

飲酒と脳卒中—メタアナリシス

小量から中等量の飲酒(1〜2単位/日、ここでは1単位=エタノール12 g)は心血管系疾患に対して保護的に作用するのではないかという報告がありますが、観察研究から結論を得るのは困難です。適量の飲酒では善玉HDLコレステロールが増加し、インスリン感受性が…

潜在性脳梗塞があると認知症になりやすい(どれだけ?)

脳梗塞(特に脳小血管病によるラクナ梗塞)があっても、脳卒中の症状が出ることは意外と少ないことが知られています。しかしながらこのような小さな病変によって認知機能は障害され、認知症の発症は増加すると考えられています。脳MRIを用いて、多数例を追跡…

アパシーやうつと心筋梗塞、脳卒中、死亡率との関連

高齢者のうつ徴候スケールにある15項目のうち3つがアパシーを代表する。このスケールによって評価されたアパシーと他の12項目によるうつの徴候(診断ではない)が心筋梗塞や脳卒中、死亡率と関連するのかについて解析した報告があります[Ref. 1] 。系統的文…

女性の脳は守られている

出産数が5以上の女性では潜在性脳梗塞が少ないことが観察されています[Ref. 1] 。一般的に女性の脳梗塞の頻度は男性の3分の2くらいですが、潜在性脳梗塞についても同様の結果でした。その理由としては、まず女性では飲酒や喫煙が少ないことがあります(研…

中等度の心血管系疾患リスクに対する血圧とコレステロール低下療法

収縮期血圧が160 mmHg以上なら、臓器障害を伴う高血圧や糖尿病、腎臓病、さらには危険因子を持たないヒトにおいても、降圧療法により心血管系疾患の発症を減らすことができることが分かっています。問題はこれより低い血圧で(だいたい心血管疾患の発症率が…

欠損値解析計画から無くしたものは何?

統計学が最強の学問です。なぜならランダム化比較試験を行なえば「人間の制御しうる何物についても、その因果関係 [注1] を分析できるから」です。ランダム化してしまえば、ランダム化に関わる1要因以外は群間で同じなので、得られた群間の差(結果)の原…

女性はなぜ、男性よりも長生きするのか?

なぜ歳をとるのでしょうか?野生の動物は若い時期に淘汰されるので、歳をとってから悪さをする遺伝的素因は除去されにくいという側面があります。一方では、若い時期に良い影響を及ぼす遺伝子でも、その同じ遺伝子が歳をとってからは悪い作用を発揮する—たと…

抗酸化物質による心血管系疾患の予防効果はなかった

果物や野菜に多く含まれるビタミンCやビタミンE、ベータカロテンなどの抗酸化物質によって心血管系疾患(心筋梗塞や脳卒中、心血管系疾患による死亡)が予防できるはずだと信じていましたが、ランダム化比較試験では期待ハズレのことが多かったという現実が…

最近評判の良い地中海食 (改訂後に再掲)

地中海食とは、オリーブオイル・果物・ナッツ・野菜・穀類(精製していない炭水化物)を多量に、魚・鶏肉を比較的多く、乳製品・赤みの肉・加工した肉・甘いものを少なくし、料理と一緒に適量のワインを摂取する食事です。 糖尿病もしくは少なくとも3つの危…

ビタミンやミネラルのサプリによる心血管系疾患の予防効果

心血管系疾患予防のための食事としては、(1)飽和脂肪酸やトランス脂肪酸、赤身の肉を減らし、果物と野菜を多くしたもの、(2)地中海食、(3)ベジタリアン食などが推奨されています。サプリよりもこのような食事によって必要な栄養素を取るべきでしょ…