認知症の危険因子としての食後高血糖

私たちはなぜ空腹(断食)の状態で血液検査を受けるのだろうか?欧州動脈硬化学会と欧州臨床化学・臨床検査連盟は、通常の脂質検査(採血)は空腹時に行なう必要はないというコメントを発表した [Ref. 1] 。その推奨項目はきわめて簡潔な表にまとめられてい…

腎臓と脳と認知機能

腎臓は体内の老廃物を尿として排出する以外にも実に多彩な機能を持ち、「人体ネットワーク」の要の役割を果たしている [注1] 。最近、腎臓は脳の働きにも影響を及ぼすことが明らかとなり、注目されている。 一般住民560人(女性が60%、平均年齢72歳)の脳MR…

認知機能低下に関与する睡眠障害

2日間徹夜すると「注意力」や「集中力」は急激に低下する。6時間くらい眠れば大丈夫だと思っていても、「6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜したのとほぼ同じ状態」であるという。わずかな睡眠不足が、まるで借金のようにじわじわ積み重なる「睡眠負…

教育と脳

大島潜居となった西郷吉之助はこの機会に書物を読むことにした。書物を読みすぎると何事に対しても決断できず「迷ってばかりいる人間になる」のではないかと大久保一蔵は心配したが、大久保の父次右衛門は次のように述べた。「そげん人間は、もともとぐずな…

ゆるやかな糖質制限によるダイエット

ダイエットとは(脂質を減らすことによる)カロリー制限のことと思い込んでいたが、それは「神話」でしかなかった。体重の適正化や糖尿病のコントロールには「糖質制限」がもっとも効果的であり、山田は「ゆるやかな糖質制限=ロカボが人類を救う」と主張し…

地中海食は高齢者の認知機能を改善する

スペインで行われた研究 [注1] では、地中海食は有害事象の減少—特に脳卒中予防—に効果があった [Ref. 1] 。 この大規模研究の一部を用いて、地中海食の認知機能に及ぼす効果が検討された [Ref. 2] 。複数の血管危険因子をもつ「ハイリスク」の447名(55歳…

最も健康に良いスポーツ種目は?

若い時(19から29歳ごろ)にテニスをしていたヒトは、その後の人生で心筋梗塞となることが少ない [Ref. 1] 。テニスは中年期以降も続けることが多く、比較的強度のある有酸素運動であることがその主な理由であろう。 どのスポーツ種目が健康に良いのか? 英…

老化は足から

「足が衰える」ことは、単にからだだけの問題ではなくて、脳の働きにも関係している。からだの問題としては、たとえば糖尿病や大脳白質病変があると歩行速度が遅くなることが観察されている [Ref. 1] 。さらに、足し算をしながら歩くという「二重課題歩行」…

アルツハイマー病のバイオマーカーとしての脳アミロイド沈着

アルツハイマー病の確立されたバイオマーカーである「脳アミロイド沈着」を、アミロイドPETを用いて検出できる時代になった [注1] 。 複数回アミロイドPET(初回から最後まで1.3年 [中央値])を検査した260例(認知機能正常205例、軽度認知機能障害/アルツ…

血管性認知症もしくはビンスワンガー病について

CTと比べるとMRIでは大脳白質病変ははるかに明瞭に描出できるようになった。大脳白質病変があると認知機能が障害され、広汎な白質病変を特徴とする血管性認知症はビンスワンガー病と呼ばれている [注1] 。 ビンスワンガー病の特徴は—広汎な白質病変に加えて…

動かないからボケるのか、ボケたから動かないのか?

身体活動度が高い(からだをよく動かす)ことは認知症を予防すると考えられている。しかしながら逆に、認知症になった(なりかけた)状態だからこそ、からだを動かさないのかもしれない。 35歳から55歳までの一般住民10,308人を28年間追跡し、身体活動度と認…

最近評判の良い地中海食

地中海食とは、オリーブオイル・果物・ナッツ・野菜・穀類を多量に、魚・鶏肉を比較的多く、乳製品・赤みの肉・加工した肉・甘いものを少なくし、料理と一緒に適量のワインを摂取する食事である。 糖尿病もしくは少なくとも3つの危険因子をもつ7447名(55歳…

高血圧と脳

年齢とともに高血圧の頻度は増加する。55歳と65歳で正常血圧のひとの生涯高血圧発症リスクは90%である (10人中9人は高血圧となる!)[Ref. 1] 。一方では、70歳から85歳までの15年間に認知症を発症した群の血圧は、追跡開始時には高く、認知症発症後には低…

減塩後進国 日本

2015年より食塩の摂取目標値が引き下げられ、1日あたり男性8 g、女性7 gと厳しくなった。高血圧患者は、食塩摂取を6 g/日未満とするように指導されている。しかしながら24時間蓄尿による調査では、日本人の塩分摂取量は1日あたり男性14 g、女性11.8 gとい…

なぜ、教育に実験が必要なのか?

教育と認知症について、69もの観察研究をまとめたメタアナリシスがある [Ref. 1] 。これによると教育歴が低いと認知症は増加する(オッズ比と95%信頼区間は、認知症の頻度に対して2.61 [2.21-3.07]、発症率に対して1.88 [1.51-2.34])。明らかに教育には認知…

MRIで初めてみつかる「かくれ」脳梗塞

画像診断技術—特にMRI—の進歩により、明らかな症状をともなわない「無症候性脳梗塞」が診断されるようになった [注1] 。まったく「無症候」というわけでもないので、「潜在性脳梗塞」の方が正確であろう。「かくれ脳梗塞」というくだけた言い方もある(学術…

認知症が増加している!?

高齢者の人口が増加しつづける社会では、当然のように認知症の有病率も増加すると予想される。しかしながら、認知症(発症率)は減少しているとするいくつかの報告がある。 フラミンガム研究 [注1] では1975年より認知症発症率の調査を開始した [Ref. 1] 。…

主観的な物忘れ—「気にしすぎ」なのか?

高齢者に(軽度の?)物忘れがある場合、「年相応」であり、「正常範囲」とすることがこれまでは多かった。しかしながら、主観的な物忘れもアルツハイマー病の初期症状として重要ではないかという観点から、詳細に検討した報告がある。 神経内科の外来を受診…

「動かない」と人は病む

「体も頭も使わないとなまる」ことは「常識」として知られている。毎日の生活が不活発になってくると、非常に多くの心身のはたらきが少しずつ低下し、「生活動作の不自由さ、やりにくさ」が出てくる。この状態を大川は「生活不活発病」としてとらえた [注1]…

チョコレートと脳卒中

本当のチョコレートは栄養成分表示のいちばん最初に「カカオ」と書かれている。最初に「砂糖」があったら、それはチョコレートではなく、チョコ味をつけた砂糖のかたまりである [注1] 。それでは「本当の」チョコレートは健康に(ここでの私の興味は脳に)…

睡眠と脳卒中

ぐっすり眠ることが大事なことは直感的に理解できる。睡眠不足は生活の質をそこない、肥満や高血圧、心血管系疾患など生活習慣病になりやすくする。それでは最高の睡眠とは何かというと—「最初の90分」をしっかり深く眠ることができれば—良質の睡眠をえるこ…

脳が好きなエクササイズ

アルツハイマー病で最初に脳萎縮が起こるのは海馬といわれる部位である。海馬は記憶をつかさどり、海馬が萎縮すると記憶力が衰える。一方、からだをよく動かすヒトでは海馬が萎縮しにくく、アルツハイマー病(認知症)になりにくいと言われている。エクササ…

ワインと脳

言うまでもないが、大量飲酒やアルコール依存症となると健康によくない。しかしながら、軽度から中等度の飲酒では認知症や脳卒中になるリスクが低いことがいくつかの研究により示されている。 軽度から中等度飲酒をあつかった観察研究(一般住民589人、平均8…

疲れた脳の休め方

マインドフルネス [注] 瞑想が「脳の休息法」として注目されている。意識的な活動をしていないとき(何もせずにぼんやりしているとき)に働く、いくつかの脳領域—後帯状皮質や内側前頭前皮質など—からなるデフォルト•モード•ネットワークは(何もしてないは…