ワインと脳

言うまでもないが、大量飲酒やアルコール依存症となると健康によくない。しかしながら、軽度から中等度の飲酒では認知症脳卒中になるリスクが低いことがいくつかの研究により示されている。

 

軽度から中等度飲酒をあつかった観察研究(一般住民589人、平均80.1歳)では、総アルコール摂取量もしくはワインの摂取量が全脳容積と正の相関があった(飲酒すると脳が萎縮しにくい!?)[Ref. 1] 。ビールと蒸留酒には同様の関係はなかったので、保護効果は主としてワインに由来する。ワインの脳萎縮軽減(保護)効果は、ワイン(特に赤ワイン)に多く含まれる抗酸化物質(フラボノイドとポリフェノール)によるものかもしれない。この結果からすると赤ワインはからだ(脳に)によさそうだが、その証明のために必要なランダム化比較試験(強制的に飲む群と飲んではいけない群に振り分ける実験)を行うことは現実的に不可能であろう。

 

「適量のワインなら飲んだほうが良い」とは言えない。

 

Ref. 1: Gu Y, Scarmeas N, Short EE, Luchsinger JA, DeCarli C, Stern Y, Manly JJ, Schupf N, Mayeux R, Brickman AM. Alcohol intake and brain structure in a multiethnic elderly cohort. Clin Nutr 2014;33:662-667