認知症が増加している!?

高齢者の人口が増加しつづける社会では、当然のように認知症の有病率も増加すると予想される。しかしながら、認知症(発症率)は減少しているとするいくつかの報告がある。

 

フラミンガム研究 [注1] では1975年より認知症発症率の調査を開始した [Ref. 1] 。2008年までの30年間を4つの区分として検討した結果、認知症の発症率は1997-1983年の3.6/100人(5年累積発症率)から2004-2008年の2.0/100人へと直線的に減少した(44%もの減少!)。認知症減少は、「高校卒業以上」の教育歴を持つものに限られていた。認知症の病型別では、血管性認知症が有意な減少を示した— しかしながらこれは血管危険因子や脳卒中の減少では説明できなかった。すなわち「認知症が減少しているのは(少なくともフラミンガムでは)確かなようだが、教育が普及したこと以外には格別な理由がみあたらない」という結果となっている。今後、認知症を減少させた仕組み—通常の多変量解析ではデナイのではないか—について具体的に判明すれば、より効果的に認知症を予防することができるはずである。

 

最近、認知症が増加しています(という注意喚起が増加中)。ご注意ください!?

 

注1:フラミンガム研究は、1948年に5209人の地域住民を対象として、アメリカ合衆国マサチューセッツ州フラミンガム(ボストンの近く)で始まった—当初は心血管系疾患予防に特化した—疫学研究である。

 

Ref. 1:Satizabal CL, Beiser AS, Chouraki V, Chêne G, Dufouil C, Seshadri S. Incidence of Dementia over Three Decades in the Framingham Heart Study. N Engl J Med 2016;374:523-532