減塩後進国 日本

2015年より食塩の摂取目標値が引き下げられ、1日あたり男性8 g、女性7 gと厳しくなった。高血圧患者は、食塩摂取を6 g/日未満とするように指導されている。しかしながら24時間蓄尿による調査では、日本人の塩分摂取量は1日あたり男性14 g、女性11.8 gという結果もあり、日本は「減塩後進国」というしかない [注1] 。

 

17カ国101,945人の早朝空腹時の尿からナトリウムとカリウムの24時間排出量を算出し、平均3.7年追跡した結果が報告されている [Ref. 1] 。予想通りというか、やはりナトリウム高排出群(食塩摂取過剰)では、死亡と心血管系疾患の発症が多かった(オッズ比と95%信頼区間は、1.15 [1.02-1.30])。ナトリウム高排出と死亡/心血管系疾患増加の関連は高血圧患者において顕著であった。ところが、意外なことにナトリウム低排出群でも死亡と心血管系疾患の発症が多かった。これは「食塩制限が必要な病気のために治療や指導により食塩摂取をひかえていて、またそのような病気があるから心血管系疾患を発症しやすい」など、原因と結果が逆になっているのかもしれない(観察研究の限界とも言える)。

 

つい最近まで人類の食塩摂取量は1日あたり2g以下だったのに![注2]

 

注1:道は険しい? ”減塩社会” への挑戦(クローズアップ現代 No.3546 2014年9月4日放送)

 

注2:約1万年前に農耕が始まったが、それ以前の旧石器時代—狩猟と採集の時代—の食塩摂取量は約1.7 g/日であると試算されている。

Eaton SB, Konner M. Paleolithic nutrition. A consideration of its nature and current implications. N Engl J Med 1985;312:283-289

 

Ref. 1O'Donnell M, Mente A, Rangarajan S, McQueen MJ, Wang X, Liu L, Yan H, Lee SF, Mony P, Devanath A, Rosengren A, Lopez-Jaramillo P, Diaz R, Avezum A, Lanas F, Yusoff K, Iqbal R, Ilow R, Mohammadifard N, Gulec S, Yusufali AH, Kruger L, Yusuf R, Chifamba J, Kabali C, Dagenais G, Lear SA, Teo K, Yusuf S; PURE Investigators. Urinary sodium and potassium excretion, mortality, and cardiovascular events. N Engl J Med 2014;371:612-623