カレーは脳の健康に良いのか?

多数例の前向き観察研究からは、唐辛子(特に生の)により総死亡率と特定疾患(癌や虚血性心疾患、呼吸器疾患)による死亡が減少するということです。それならカレーも健康に良いのではと—直感的に—思うわけですが、カレー粉の成分であるクルクミンを腸から吸収しやすくした製剤とプラセボとのランダム化比較試験により、記憶力が改善することが(やっと)示されました [Ref. 1] 。

 

少し数字を見ていきたいと思います。試験開始時の記憶検査点数の平均値が約70点、標準偏差が約30、プラセボ群には改善が見られず、実薬群は90点ほどまでの改善効果があるとして、エフェクトサイズは(90−70)÷30≒0.67、変動係数は標準偏差÷平均値=30÷70≒0.43(43%)となります。厳密な「検出力」の計算はさておき、各群約20例でギリギリ有意差はでています(一般線形モデルで解析)。しかも—著者らも論文の考察で認めているように—少数例での解析であり、(ここがより重要ですが)多重検定の補正はしていません。つまりエンドポイントがたくさんありすぎて、どこかで(ここでは記憶の検査で)偶然有意差が出ただけなのかもしれないのです。予備的試験であるとは明記してあるのですが----

 

インド人に聞いてみたい —「カレーは脳に良いのか?

 

Ref. 1 Small GW, Siddarth P, Li Z, Miller KJ, Ercoli L, Emerson ND, Martinez J, Wong KP, Liu J, Merrill DA, Chen ST, Henning SM, Satyamurthy N, Huang SC, Heber D, Barrio JR. Memory and Brain Amyloid and Tau Effects of a Bioavailable Form of Curcumin in Non-Demented Adults: A Double-Blind, Placebo-Controlled 18-Month Trial. Am J Geriatr Psychiatry 2018;26:266-277.