健常高齢者におけるアパシーについて

アパシーとは、認知機能障害や感情的動揺、意識障害などによらない「一次的」なやる気の低下を意味します。「自発的目的行動の減少」という行動としてとらえる立場もあります。高齢者に時にみとめられる「うつ」の中には、実際は白質病変など脳小血管病に由来するアパシーがその本質であるという意見があります。英国の研究グループは脳小血管病に伴う「うつ」—つまり血管性うつ病—に関する一連の研究において、うつとアパシーを区別して構造方程式モデリングにより解析し、白質病変によってもたらされるのはアパシーであり、うつではないことを示しています[Ref. 1] 。オランダでの一般住民において、うつよりもアパシー認知症の発症に関連していたという成績が示されていて[Ref. 2] 、今後は高齢者のアパシーが潜在性能病変や認知症発症との関連という観点から、より重要視されていくと思われます。

 

 

Ref. 1: Hollocks MJ, Lawrence AJ, Brookes RL, Barrick TR, Morris RG, Husain M, Markus HS. Differential relationships between apathy and depression with white matter microstructural changes and functional outcomes. Brain 2015;138:3803-3815. 

 

 

Ref. 2: van Dalen JW, Van Wanrooij LL, Moll van Charante EP, Richard E, van Gool WA. Apathy is associated with incident dementia in community-dwelling older people. Neurology 2018;90:e82-e89.