アミロイドβ抗体によるアルツハイマー病の治療

アミロイドはアルツハイマー病が発症するかなり前から脳内に沈着し始め、その後の病気進展のきっかけとなります。したがってアミロイドに対するモノクローナル抗体を投与して、脳内のアミロイドを除去すれば、アルツハイマー病の発症を抑えることができると考えられます。これまでに行われたいくつかの研究の結果がまとめられています[Ref. 1] が、アミロイドに対するモノクローナル抗体の有効性を示したものは残念ながらありませんでした(現在進行中の研究もいくつかあります)。アミロイドに対するモノクローナル抗体の副作用としての脳浮腫の問題や、そもそもこの抗体が脳内に移行するのかという疑問(およそ0.1%しか血液脳関門を通過しない)、アルツハイマー病が発症する前(より早く)に投与しなくては効果がないのではなどなど、現時点では解決されてない課題もあります。アミロイドに対するモノクローナル抗体によるアルツハイマー病の治療は今のところ期待はずれのようです [注1] 。

 

注1:有望視されていたアミロイドに対するヒトモノクロナール抗体アズカヌマブの臨床治験が20193月に中止されたことで、失望感が広まっています。中止の理由は、安全性の問題ではなく、効果がないからということのようです。

Ref. 1:van Dyck CH.Anti-Amyloid-β Monoclonal Antibodies for Alzheimer's Disease: Pitfalls and Promise. Biol Psychiatry2018;83:311-319.