脳の健康のために (6) 認知症の予防

高齢者の人口が増加しつづける社会では、当然のように認知症患者の数(有病率)は増加しますが、認知症の発症率は減少しているという報告があります。認知症の発症率が減っていれば、認知症の予防ができている(もしくは予防可能性がある)ということです。認知症発症のリスク要因として、人種や遺伝的素因ではなく社会経済状況が強い影響を及ぼしていて、これは一種のマタイ効果と言えるのではないでしょうか。アミロイドはアルツハイマー病が発症する15年ほど前から脳に沈着し始めます。アミロイドに対するモノクローナル抗体を投与して、脳内のアミロイドを除去することができれば、アルツハイマー病の発症を抑えることができるはずです。しかし、モノクローナル抗体によるアルツハイマー病の治療は今のところ期待ハズレです。脳を鍛えるエクササイズ「脳トレ」が認知症を予防するかについては一致した見解はありません(が、知的な活動に従事するのは良いのではないでしょうか)。店頭で売られているサプリは認知症を予防するかについては、全く効果なしです。サウナに頻回に入るヒトには心臓突然死や虚血性心疾患が少ないことが知られていますが、サウナによって認知症も予防ができるかもしれないという報告があります。難聴があると認知症のリスクが高くなります。脳微小出血は、大脳皮質領域にみとめられるアルツハイマー病やアミロイドアンギオパチーとの関連が強いものと、大脳深部や小脳/脳幹にみとめられる脳小血管病(動脈硬化)によるものとに大別されます。全ゲノムでのSNPs解析から算出した遺伝的背景やアポリポプロテインε4遺伝子は、それがあると絶対発症するという原因遺伝子ではなく、発症リスクを少しだけ上げる危険因子です。近親者に認知症のヒトがいるからといって、過剰に心配する必要はありません。それよりも脳の健康に良い生活習慣に心がけましょう!

 

教育・難聴への対策・高血圧のコントロール・肥満(メタボも)の解消・(もちろん)禁煙・うつにならない/ 脳を疲れさせない・身体からだを動かす・社会から孤立しない・糖尿病の治療など、認知症の危険因子を制御することで認知症は(無くしてしまうことはできませんが)予防できます。