精製されてない炭水化物は健康に良い(のか?)

一日350 gの野菜摂取目標をクリアすることは容易ではありません。腸内細菌のエサとなる水溶性食物繊維は一日5 g以上取った方が良いとされています。水溶性食物繊維が豊富な食材としてはボガド、ットウ、ボウ、ャガイモ、ンジン、カメ、ッキョウ、ジキ、メコ、ウイなどが紹介されています(アナ5時に笑ひ泣き)[注1] が、スーパー大麦は12 g加えるだけで、2 gの水溶性食物繊維をとることができます。このような食物繊維やビタミンB、微量ミネラルが豊富な「精製してない」穀物は心血管系疾患を予防するのでしょうか?

 

最近のメタアナリシスでは、無精白の炭水化物を多く摂取すると全死亡率、心血管系疾患による死亡率(相対危険度0.82、95%信頼区間0.79 –0.85)、癌による死亡率が低下することが示されています[Ref. 1] 。また別のメタアナリシスでは、精製しない穀物摂取により虚血性心疾患、心血管系疾患、がん、全死亡率、呼吸器疾患、感染症、糖尿病など多くの疾患の発症および死亡率が減少していました[Ref. 2] 。脳卒中の相対危険度は0.88(95%信頼区間0.75 - 1.03)と、精製しない穀物摂取の多量摂取群は定摂取群に比べて脳卒中が減少する傾向を認めました。津川さんの本に書かれているように「白い炭水化物」は体に悪いが、精製されていない「茶色い炭水化物」は食物繊維や栄養成分が豊富で、健康に(特に動脈硬化を抑制して)良いようです[注2] 。しかしながら。脳卒中と虚血性心疾患を分けて報告しているものが少ないため、「茶色い炭水化物」が脳卒中を予防するのかについては明確ではありません。

 

食事の内容と体重の変化(肥満)との関係を見た報告では[Ref. 3] 、体重増加と関連が強い順に、食物ではポテトチップス、ポテト、加工した肉、加工しない赤身肉、バター、デザートなど甘いもの、精製した穀類、飲料では砂糖で甘くした飲料、100%フルーツジュースなどでした。逆に体重減少と関連があったのは、野菜、ナッツ、全粒、果物、ヨーグルトでした。

 

炭水化物に限って言えば、精製された炭水化物は体に悪いのか、精製されてない炭水化物は体に良いとまで言えるのか、大変悩ましいところです。特に、脳への影響についてはエビデンスが少ないようです。

 

注1:食物繊維レボリューション NHKあさイチ 2018725日放送

 

注2:世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事 (津川祐介著、東洋経済新報社刊)

 

Ref. 1: Zong G, Gao A, Hu FB, Sun Q. Whole Grain Intake and Mortality From All Causes, Cardiovascular Disease, and Cancer: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. Circulation2016;133:2370-2380.

 

Ref. 2: Aune D, Keum N, Giovannucci E, Fadnes LT, Boffetta P, Greenwood DC, Tonstad S, Vatten LJ, Riboli E, Norat T. Whole grain consumption and risk of cardiovascular disease, cancer, and all cause and cause specific mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMJ2016;353:i2716.

 

Ref. 3: Mozaffarian D, Hao T, Rimm EB, Willett WC, Hu FB. Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men. N Engl J Med2011;364:2392-404.