抗酸化物質による心血管系疾患の予防効果はなかった

果物や野菜に多く含まれるビタミンCやビタミンE、ベータカロテンなどの抗酸化物質によって心血管系疾患(心筋梗塞脳卒中、心血管系疾患による死亡)が予防できるはずだと信じていましたが、ランダム化比較試験では期待ハズレのことが多かったという現実があります。

 

心血管系疾患の病歴があるか3つ以上の血管危険因子がある(すなわちリスクの高い)40歳以上の閉経後もしくは妊娠の可能性のない女性を対象としたランダム化比較試験の結果が報告されています(癌の病歴のあるものは除外)[Ref. 1] 。抗酸化物質としては、ビタミンC(500 mg/毎日)、ビタミンE(600 IU/隔日)、ベータカロテン(50 mg/隔日)を用いて、8171例を2×2×2のファクトリアルデザイン(各群約1000例)により、平均9.4年追跡して比較しています。その結果3つの抗酸化物質群(それぞれのプラシボー群との比較)には心血管系疾患予防効果はありませんでした。3剤の組み合わせを解析しても心血管系疾患予防効果はやはりありませんでしたが、わずかに脳卒中発症のみがビタミンCとビタミンEの組み合わせで減少していました。

 

この研究に参加した65歳以上の2824名を対象として、抗酸化物質の認知機能に及ぼす影響についての検討が追加されています [Ref. 2] 。認知機能は2年毎に3回、電話による認知機能検査によって[注1] 調査されました。平均8.9年追跡していますが、3つの抗酸化物質によって認知機能低下を抑制することはできませんでした。

 

格段の副作用もありませんでしたが、抗酸化物質によって心血管疾患予防や認知機能低下抑制効果はほぼ皆無でした。

 

注1:全般的認知機能としてはミニメンタルテストを電話で行なうことができるようにしたものを使用し、他に言語性記憶や言語流暢性(動物の名前を1分間でどれだけの数を言うことができるか)を検査しています。

 

Ref. 1:Cook NR, Albert CM, Gaziano JM, Zaharris E, MacFadyen J, Danielson E, Buring JE, Manson JE. A randomized factorial trial of vitamins C and E and beta carotene in the secondary prevention of cardiovascular events in women: results from the Women's Antioxidant Cardiovascular Study. Arch Intern Med2007;167:1610-1618.

 

Ref. 2: Kang JH, Cook NR, Manson JE, Buring JE, Albert CM, Grodstein F. Vitamin E, vitamin C, beta carotene, and cognitive function among women with or at risk of cardiovascular disease: The Women's Antioxidant and Cardiovascular Study. Circulation2009;119:2772-2780.