脳科学とダイエット

ダイエットの99%は失敗するというというデータがあります。5つの質問に答えることで、食物依存症のリスクを自動的に計算してくれるオンラインの感受性クイズ(www.FoodFreedomQuiz.com)によると、私の点数は2点で食物依存症になる危険性は低く、このクイズの作成者であるスーザン・P・トンプソンは10点満点(実際にはスケールアウトしているのでは)とのことです。ここまでエビデンスをもとに「科学的に証明された究極の食事」について考えてきましたが、食物依存になる危険性が高いヒトにとっては、問題はそれほど単純ではないようです。精製された糖質はインスリンの過剰をもたらし、過剰なインスリンは「食べるのをやめさせるホルモン」であるレプチンの働きをさまたげ、満たされない空腹感をもたらします。このようにして脳が食物依存症となっていくのです。依存症ですから、基本的に意志の力は無力です。「本当に痩せる食事法」では4つの明確な一線(単純明快で確たる、決して越えない一線)を設定しています[注1] 。詳細はこの本を読んでいただきたいのですが、明確な一線とは、(すべての添加された糖)・穀粉穀物が加工され、挽かれて粉状になったものすべて—小麦粉が代表的なもの)を食べない、食事の時間(1日3食を決まった時間に食べる)、(食べ物の重さをはかる)の4つです。科学的に証明された、エビデンスにもとづく食事が示されているのに、それを守れないのはなぜでしょうか?「わかっちゃいるけど、やめられない」ということでしょうか?それは、脳が食物依存症(特に糖質依存)となって、脳の習慣が(不健康な方へ)変わってしまっているからです。食物依存症になるリスクが高い人は、脳が糖質に依存するようになる過程や仕組み、機序について十分に理解しておく必要があります。その上で食事に関する脳の悪い習慣を断ち切らなくてはいけません。

 

時間はもとより、やる気の総量も無制限ではない(ホントは無制限どころか、集中力は普通15分ほどしかもたない)我々にとって、特に食物依存の感受性が高いヒトにとって、ダイエットとはシンドイ「脳の問題」であると肝に銘じる必要があります。

 

注1:原題はBRIGHT LINE EATING、日本語版(青木創訳)は幻冬社から。日本語タイトルは「脳科学者が教える 本当に痩せる食事法」ですが、原題は「明確な(ゆずれない)一線を設定した食べ方」というほどの意味です。翻訳には誤りや省略がかなりみとめられる。たとえば(誤→正)、脾臓膵臓(p59)、糖類→糖質もしくは糖(p117、これはかなり重篤なミス、原文のママ「シュガー」とした方が良いかも)、レプチン欠損マウスやPETスキャン、感受性オンラインクイズのデータと図、オンラインブートキャンプ中の運動強度と減量の図、Mastermind Groups ---- の段落ごとの欠損(図表も無い)、Case Study(各章の終り)は断りもなく全て省略されている。