脳の健康のために (3) 血管危険因子の管理

多量飲酒では海馬が萎縮し、節度ある適度な飲酒なら脳に良い(脳萎縮が軽い)ということはありませんでした。1日に20本喫煙した場合の(虚血性心疾患や脳卒中の)リスク増大分の40〜50%相当が、たった1日1本の喫煙で生じるので、タバコは本数が少なくても危険です。受動喫煙では全死亡と心血管系死亡(特に脳卒中)が増加し、副流煙によって認知機能障害が起こることも報告されています。

 

食塩摂取量、肥満、糖尿病、メタボ、慢性腎臓病、飲酒、喫煙、睡眠、運動習慣など様々な要素が絡まりあって高血圧という診断となっているのです。何も考えずに降圧薬を服用して、血圧値だけ下がればよいという単純なものではありません。家庭血圧を測定しないで高血圧の診断をつけてはいけませんし、家庭血圧を測定せずに降圧療法を開始してもいけません。家庭血圧測定は必須!です。白衣性高血圧により心血管疾患発症リスクは上昇します。白衣性高血圧のヒトは降圧治療するか否かにかかわらず、直ちに「食生活の改善、運動、減量、飲酒を減らす、禁煙」などに取り組むべきです。食塩摂取が多いと心血管系疾患(特に脳卒中)が直線的に増加します。減塩目標が厳しくなっているのに、いまだに日本人の塩分摂取量は1日男性14 g、女性11.8 gという結果もあり、日本は減塩後進国と言うしかありません。歳をとると多くのヒトは高血圧となり、老年期に高血圧があると脳卒中になりやすく、歳をとって血圧が下がったら下がったで、認知症になっているというこみいった関係が高血圧と脳にはあります。高血圧がもたらすのは(アルツハイマー病ではなくて)脳小血管病であり、40歳ころから定期的な血圧測定をする必要があります。厳格な降圧療法は悪くないということですが、リスクがさし迫ったものでないなら、減塩や肥満の解消、有酸素運動など、薬を飲む前にすることが(たくさん)あります。でも降圧薬が必要なヒトはきちんと服薬しましょう。

 

もちろん禁煙、血管危険因子の管理(特に高血圧のコントロール)、減塩や肥満の解消、有酸素運動など、脳の健康のためにすることが(たくさん)あります。