菜食主義では脳出血は(少し)増える

肉を食べるヒト(魚も乳製品も卵も食べる)、(肉は食べないが)魚は食べるヒト、菜食主義者(肉も魚も食べないが乳製品や卵は食べる)、絶対菜食主義者vegan、肉も魚も乳製品も卵も食べない)の心血管系疾患について英国での研究があります[Ref. 1] 。菜食主義者は果物・野菜・豆類・大豆製品・ナッツ・食物繊維の摂取が多く、飽和脂肪酸と食塩の摂取が少ないという結果でした。魚を食べるヒトと菜食主義者では虚血性心疾患の発症が少なかったのですが、菜食主義者では脳卒中(特に脳出血)が多いという結果でした。肉を食べるヒトと比較すると菜食主義者は、虚血性心疾患が10年間で1,000人あたり10人少ないが、脳卒中は3人多いということでした。この小さな数字にどれほどの臨床的意義があるのかよくわかりませんが、菜食主義では比較的大きい血管の動脈硬化(アテローマ硬化)は改善するが、血管の栄養状態としては悪化するという側面があるのでしょう。人類の歴史の大部分(農耕以前の狩猟採取時代、約1万年前まで)において「人類は多種多様な食べ物を食べて栄える、雑食性の霊長類[注2] 」であったので、そもそも特定の食物のみで生きていくようにはできていないのです。

 

注1:サピエンス全史(ユヴァル・ハラリ、柴田裕之=訳、河出書房新社

Ref. 1: Tong TYN, Appleby PN, Bradbury KE, Perez-Cornago A, Travis RC, Clarke R, Key TJ.

Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study. BMJ2019;366:l4897.