和食の光と影

日本食とは何か?「日本の伝統的食文化としての和食」 [注1] から要約してみたいと思います。日本料理というときは、料理屋で提供される高級料理という印象があり、家庭食に重点をおいて日本食文化を見ていくとすれば和食という言葉の方が適切だそうです。和食の定義はヒトさまざまとしても、和食のもっとも基本的な要件は「ご飯」(米)であることには異論はないでしょう。ご飯と漬物は決まっていて、これに自由度の高い「一汁三菜」を加えるのが和食の基本型です。三種のお菜は一つの主菜と、副菜としてより軽い料理が二種類つき、少ない(が塩分は多い)お菜を大量のご飯とともに食べ、ご飯の量でカロリーを充足させるのが和食の基本的な食べ方です。

 

世界61地域で24時間尿を採取し、魚介類摂取のバイオマーカーであるタウリンと大豆摂取のバイオマーカーであるイソフラボンを測定して、「和食スコア」を作成した家森幸男教授[注2] によると、タウリンイソフラボンがともにもっとも多い5分位のところ(5×5=25分割でもっとも多いところ)に日本人の約90%が当てはまるということです。このように和食には魚介類や大豆の摂取量が多く、肥満や脂質代謝を改善し虚血性心疾患のリスク低下をもたらしています。一方、和食は食塩摂取量が多く、高血圧と脳卒中は増加することになります。魚介類や大豆の摂取が多く虚血性心疾患が少ないこと(和食の利点)と、食塩摂取量が多く脳卒中が多いこと(和食の欠点)が表裏一体となった和食の光と影を理解して、健康的な食事について考えていく必要があります。醤油や味噌などからの食塩摂取が過剰な今のままの和食では脳の健康に良いとはとても言えません。

 

注1:農林水産省から(http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wasyoku.html

注2:「世界一長寿な都市はどこにある?」(家森幸男、岩波書店