コロナウイルスも煮つめることができるはず ベイズで
3月4日(水)
コロナウイルス検査陽性でもコロナウイルス陽性ではない。どうする?
インフルエンザA型ウイルスに対して鼻腔ぬぐい液をウイルス分離培養した結果を真の感染とした場合、通常使用されている簡易キットでは
陽性例106例中簡易キットでは100例が陽性→感度は94%
陰性例196例中簡易キットでは187例が陰性→特異度は95%
という数字がある
臨床的に8割はインフルエンザだなと思った時にこの簡易キットを用いて検査をする状況で、 10人中8人がインフルエンザの集団にこの検査をすると考えて良いのでは。
ここで陽性と出るのは
8X0.94+2X0.05=7.5+0.1=7.6人
つまり検査結果と実態はほぼ一致する
それでは10人中1人がインフルエンザの場合は
1X0.94+9X0.05=0.94+0.45=1.39人
それほど極端な乖離ではない
先ほど私が検査した受診者では(臨床的にはまずインフルエンザの可能性はないのに、ついやってしまった—始末書ものです)、おそらく確率は100分の1以下?
1X0.94+99X0.05=0.94+4.95=5.89
検査が陽性に出ても本当にインフルエンザの確率は6分の1程度
陽性という結果が出なくてよかった(20分後に出た結果は陰性でした)
日本に1000人のコロナウイルス感染者がいて、日本人全員に同じ感度・特異度の検査を行なった場合
1000X0.94+100000000X0.05→1X0.94+100000X0.05=0.94+5000=5000.94
検査結果が陽性の場合、コロナウイルスに感染しているのは5000人に1人
感度と特異度を99%とすると
1X0.99+100000X0.01=0.99+1000=1000.99
検査結果が陽性の場合、コロナウイルスに感染しているのは1000人に1人
感度と特異度を99.9%とすると
1X0.999+100000X0.001=0.999+100=100.999
検査結果が陽性の場合、コロナウイルスに感染しているのは100人に1人
3月5日(木)
コロナウイルス検査をする方が、検査をしないより危険?
低リスクの集団をベタにスクリーニングすると陽性反応が出ても、本当の病気のヒトは100人に1人とかになって(数字は状況によって変わりますが)、(検査が陽性でも)ほとんどはその病気ではありません。しかし、陽性と出た以上なんらかの対応を普通するでしょう。そうすると1人の病人と99人の病気でないヒトが同じ区域に隔離されるというような状況がありえます。もう少し(多分)現実に近ずけて、1人の病人と2人の(症状はあっても)その病気ではないヒトを、各人は個室でも同じ区域に隔離するということはありそうです。そこでは検査をしなかったヒトより(検査をしてしまったがために)感染リスクが増大するという可能性が出てきます。この悪循環が連鎖すると、PCRで塩基配列が指数関数的に増加するように、病気が爆発的に増加するかもしれません。ひょっとするとどこかの国とどこかの船ですでに起こったことかもしれません。これもPCR(倍々ゲーム)なのでしょうか。
3月7日(土)
臨床家はインフルエンザ診断にベイズを無意識で使っている
世間でインフルエンザが流行っているから、流行期には何も考えず(自動的に)綿棒を鼻に突っ込んで検査をするのではありません。世間でインフルエンザが流行っている(事前確率が高い)から、検査が陽性の時インフルエンザである確率が高い(事後確率が高い)のです。10人中1人の頻度でインフルエンザがある時、感度と特異度を仮に0.9とすると陽性となる確率は1.8/10、陽性の約半分しか真の患者はいません。当てずっぽうでは10分の1人なので、検査をした方が5倍くらい正確(ただし事前確率より事後確率が良いためには、感度と特異度がある程度良いというか、ひどく悪くないことが前提です)。
コロナウイルスのPCRの感度が50%という数値もあります。特異度を0.9として、患者数を多く見積もって1万人に一人としてみましょう。検査陽性の時にコロナウイルス感染者である確率は約2000分1です。どうする?どうしようもないのか!当てずっぽうでは1万分の1なので、検査したことで5倍濃縮にはなっています。めんつゆなら十分だが、臨床的にはもっと濃縮する必要があります。リスクの低い1万人を検査するのではなく、この1万人からハイリスクの1000人が検査の適応とまで「臨床的に」濃縮する必要があります(何倍濃縮する必要があるのか、できるのかは不明です)。1000人に1人がコロナウイルス感染者なら。陽性者100人中1が真の患者となる。この100人を一箇所に隔離してもムダということは直感的に明らかです。そんなことしたら患者でない最大99人にコロナウイルスが感染するかもしれない。
疲れてきた あとは明日また考えてみよう
3月8日(日)
コロナウイルスも煮つめることができるはず
P(C|P)=P(P|C)P(C)/P(P)
煮つめて事前確率P(C)を上げるしかない
逆に言うと検査対象者を絞るしかない(ハイリスク群を検査する)
感受性0.5、特異度0.9として
P(C|P)=0.5P(C)/0.4P(C)+0.1
P(C)=100人に一人ならP(C|P)=約20分の1
ここで感受性を0.9とかに上げてみても、p(C|P)=約10分の1なので質的には著変ありません
データを持っている施設なら「P(C)=100人に一人」まで煮つめることができるはず?!
それでも20人(〜10人)に一人か また疲れてきました
ちょっと待ってください
ダイアモンドプリンセスでは当初P(C)=200人に1人とか言ってなかったか?P(C)=100人に1人としても全員を検査した場合、検査陽性者のうち20人に1人が真の患者
臨床所見でどれくらい煮込めていたのでしょうか?
アヒージョは具材によって、煮込む時間を適切にすることが味の決め手
それともダイアモンドプリンセスの調理場には煮込み鍋はなかったのか?!