食物の抗酸化物質フラボノールと認知症

マインドダイエット[注1] の提唱者であるモリスさん(Mertha Clare Morris, Sc D)が2020年2月14日に64歳で亡くなられました。マインドダイエットは地中海食とDASH食のハイブリッドで、葉物緑色野菜・ナッツ・ベリー(小果実)・魚・鶏肉・全粒穀物・豆類・オリーブオイル・適量のワインなどを多く、赤身肉・バター・マーガリン・加工食品を控えめとする食事で、脳の健康に良いこと(認知症を予防すること)を重視するものです。マインドダイエットの栄養素の中で特に注目すべきものとして、野菜や果物に多く含まれる抗酸化物質であるフラボノール、葉物緑色野菜に比較的多い葉酸フィロキノン(ビタミンK1)・ルテインなどが認知機能低下を抑制するのではないかと考えられています。モリスさんが主導した米国での研究では、当初認知症のなかった921名の一般住民(平均年齢81.2歳、75%は女性)から平均6.1年の追跡期間中に220名のアルツハイマー病の発症がありました[Ref. 1] 。抗酸化物質であるフラボノールを多く摂取している群(上位5分位)ではアルツハイマー病の発症が少ないことが示されました。フラボノールを多く摂取していたヒトは教育レベルが高く、身体活動や知的活動により多く参加していましたが、このような要素や心血管疾患、他の栄養素で補正しても結果は同様でした。このような「脳の健康に良い食事」と運動、知的・社会的刺激、心血管系疾患の予防などを組み合わせることにより高齢者の認知機能低下を防げるのではないかという研究が進行中です。

 

注1:MIND dietとはMediterranean-DashIntervention for Neurodegenerative Delayの略です。モリスさんの追悼記事はMedscape(https://www.medscape.com/viewarticle/926627)を参考にしました。

Ref. 1: Holland TM, Agarwal P, Wang Y, Leurgans SE, Bennett DA, Booth SL, Morris MC. Dietary flavonols and risk of Alzheimer dementia. Neurology2020 Jan 29. [Epub ahead of print]