血圧を下げすぎてきつくないか

高血圧の降圧目標は厳しくなっています。これは厳格な降圧療法により、心血管疾患や死亡率がさらに低下したというランダム化比較試験(SPRINT研究など)の結果を受けたものです。SPRINT研究では、治療される側の主観的満足度(治療や薬剤に対する満足度、治療を遵守できたかなど)からみても「厳格な降圧療法は悪くない」という結果でした(つまり血圧をかなり下げてもきつくなかった)。

 

このように「下げることが可能なら、血圧は低ければ低いほど良い」となってきています。最近、中国で行なわれた高齢者の厳格降圧療法に関するランダム化比較試験では、厳格降圧群で脳卒中心筋梗塞、死亡などの主要イベントが26%減少しました。低血圧以外の副作用は2群間で差はなく、したがって高齢者においても「高血圧は厳格にコントロールした方が良い」ということになります。しかし、実際の臨床場面では、特に高齢者が対象の場合は、事はそう単純ではなく、現場では低血圧や失神、腎機能の増悪などについて十分注意が必要です。一人ひとりの状況に注意して血圧を下げる必要があります。

 

ここでもエビデンスをもとにした上での、個別の対応は「そのヒトにとっての最適化」が必要です。さらにリスクがさし迫ったものでないなら、減塩や肥満の解消、運動など、薬を服用する前にすべきことが(たくさん)あります