お酒の適量とは

飲酒量の単位として、多くの国ではエタノール10グラムが1単位です。「節度ある適度な飲酒」とは1日平均純アルコール20グラム(2単位)までです。少し具体的にみてみましょう。たまたまここに「Rabbit Ridge 2016 ZINFANDEL」があります。アルコール濃度15.3%ですから2単位は、20➗0.8➗0.153=163ミリリットルです。私がいつも使っているワイングラスでは1杯120ミリリットルほどなので、グラス1杯で1.5単位です。ワインとアルコール濃度がほぼ同じくらいの日本酒なら1合弱、焼酎(25度)100ミリリットルが2単位です。ビールはどうでしょうか。たまたまここにあるエビスビール(アルコール濃度5%)350ミリリットルが何単位かを計算すると、350×0.05×0.8➗10=1.4単位ですから、缶ビールなら500ミリリットルが2単位、チュウハイ(7%)350ミリリットルも2単位です。

 

少し脱線して、マテイーニはどうでしょうか。マテイーニのカクテル・グラスは通常90ミリリットルの容量で、アルコールとしては、90ミリリットル×ジン5分の4×アルコール濃度40%×0.8グラム/ミリリットル=23グラム(2.3単位)です。カクテルとは「複数の材料をまぜ合わせたアルコールの飲み物」ですが、その本質は「そのままではとても飲めないほどの強いお酒を飲みやすくしたもの」ではないでしょうか。通常のマテイーニでも相当強くて「飲みやすくしたもの」とはとても思えませんが、文豪のヘミングウェイはジン15とベルモット1の、ほとんどストレートのジンを頼んでいたそうです。これは「モンゴメリー将軍を頼む」と言って注文したそうです。第二次世界大戦のイギリス軍モンゴメリー将軍が敵軍1に対して自軍が15以上のときしか攻撃しなかったという故事からきています。これほど強いお酒が健康に良いはずもなく、「節度ある適度な飲酒」が大事です。

 

適量の飲酒は善玉コレステロールを増加させ、インスリン感受性を改善し、凝固因子のフィブリノーゲンを減少させるなど好ましい効果があると言われていて、心血管系疾患を減らす可能性があります。一方では、飲酒により長期的には血圧は上昇し、脳塞栓症の原因となる不整脈である心房細動も増加します。メタアナリシスでは、男性のみで小量から中等量の飲酒(アルコール10〜40グラム/日)で心血管系疾患発症リスクは3割ほど減少していましたが、3つ以上の併存疾患があると、このアルコールによる保護効果は消失していました。血管危険因子や併存疾患があれば(無くても)(お酒に強くても、弱くても)飲まないのが一番安全です。