脳が好きなエクササイズ

体を動かすと認知機能が改善し、認知症になりにくいことを示した多くの研究がありますが、系統的文献検索(システマテイックレビュー)によると、多くの研究は短期間・少数例の観察で、不十分なものです。良質な研究としては、120人の高齢者をトレッドミルでの有酸素運動とストレッチ(対照群)に振り分けて比較したランダム化比較試験があり、この研究では有酸素運動群では1年後の海馬容積が絶対値で2%増大し、記憶が改善し、脳由来神経栄養因子(BDNF)が増加していました。これは有酸素運動によりアルツハイマー病が予防できる可能性を示唆しています。

 

高齢者においてエクササイズにより遂行機能(前頭葉機能)が改善するのかをみた33のランダム化比較試験のメタアナリシスでは、基本的で多様な遂行機能、すなわち自制力、ワーキングメモリー、行動のシフトなどが少しだけ改善していました。これまでの見解と同様で常識的と言える結果でした。エクササイズの効果は、特に比較的若い高齢者(55-65歳)や認知機能障害のない群で明らかでした。その有益効果の程度は、エクササイズの頻度・強度・時間・タイプなどとは無関係でした。