健常高齢者のやる気の低下

認知機能障害や感情的動揺、意識障害などによらない(特に原因の無い)「やる気の低下」アパシーと言います。うつ病でもアパシーとなりますが、うつ病特有のゆううつ気分や罪悪感、絶望感などはアパシーにはありません。英国の研究グループは、高齢者の大脳白質病変に伴う症状はうつではなくアパシーであることを示しました。アパシーがあると健康志向の行動やスポーツ・運動習慣などが減少し、生活習慣病のリスクが増大します。21の研究のメタアナリシスでは、アパシーがあると心筋梗塞は21%、脳卒中は37%、死亡率は47%増加していました。

 

認知症もしくは近い将来認知症になる恐れのあるヒトの多くは軽度認知機能障害や主観的認知機能低下などのまろやかな状態にあって、軽度認知機能障害は5〜15%は認知症へと増悪するものの20〜25%は正常域まで改善します。このような不安定な認知機能の状況でもっともよくみられるのがアパシーです。アパシーがあると心血管系疾患のみならず、認知症のリスクも増加するのではないかと考えられています。16研究のメタアナリシスにおいて、軽度認知機能障害のヒトにアパシーがあると認知症発症リスクは2倍でした