主観的な物忘れ—「気にしすぎ」なのか?

健常高齢者に(主観的な)物忘れがある場合、年相応であり、正常範囲(平たく言えば「気にしすぎ」)としてきましたが、高齢者が物忘れを訴えるのは「気のせい」ではないかもしれません。例えば、認知機能検査が正常でも自覚的物忘れがあるヒトではアルツハイマー病の特徴である海馬の萎縮がみとめられました。しかし、認知機能が低下してしまうと物忘れを自覚していませんでした。このように主観的物忘れはアルツハイマー病の初期によくみられ、より重視すべきであると考えられるようになってきています。主観的なもの忘れがある健常高齢者を4年以上追跡した調査では、27%が軽度認知障害に、14%が認知症となったと報告されています。

 

客観的な認知機能障害へと進展する主観的認知機能障害の特徴としては、主観的な記憶力の低下や60歳以上で出現したもの、本人にとって「悩ましい」主観的認知機能障害、持続的であるものなどが挙げられています。もちろん主観的認知機能障害の原因がうつや不安、睡眠障害などによることもありますし、まったく正常な加齢現象のこともあります。主観的なもの忘れは認知症の「最初の一歩」なのでしょうか?「主観的なもの忘れ」を「客観的に」評価しなくてはいけないようです。