女性の脳は守られている

一般的に女性の方が男性より約7歳長生きします。女性はなぜ男性より長生きするのでしょうか?女性はお酒やタバコを嗜むヒトが少ないなど生活習慣に違があるからなのか、それとも生殖期間にある女性は性ホルモンによって保護されているのでしょうか。たくさん子供を産むと、自分の体の維持と修復がおろそかになって、長生きできないという仮説もありますが、高齢で出産した女性は長寿であるという報告もあります。

 

女性特有の心血管系疾患の危険因子について考えておく必要があります。女性は閉経を境に高脂血症となることが多く、体重と内臓脂肪が増加します。7.3%の女性は40〜44歳での閉経(早期閉経)を経験し、1.9%は40歳以前に閉経します(早発閉経)。早発閉経の女性は心血管系疾患リスクが1.36倍となり、(主に閉経が早いことにより)生殖期間が短いと心血管系疾患の発症リスクが1.71倍になります。また、40歳以前に閉経すると脳卒中リスクは1.48倍となることが報告されています。

 

私たちも早発閉経では潜在性脳梗塞が多いことを観察しています。さらに出産数が多い女性には潜在性脳梗塞が少なかったので、生殖期間の女性は女性ホルモンにより保護されていて、種を保存することに貢献し、それが結果的に女性の長寿につながっているのかもしれません。逆に、最終出産年齢は高いほど潜在性脳梗塞が多くなる傾向があり「多産は良いが、高齢出産は良くない」ということのようです。ただし単純に血液中の女性ホルモン濃度が高ければ良いのではなく、閉経後のエストロジェン補充療法により脳卒中は増加します。