なぜ、教育に実験が必要なのか?

教育には認知症の予防効果があると考えられています。アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米で行なわれた共同研究では、高校卒業以上の教育および高い仕事の複雑性はともに認知症発症までの期間を延長させていました。教育効果の28%は仕事の複雑性によって仲介されることが媒介分析により示されていて、教育の認知症予防効果の一部は「高度な教育を受けることで、より良い職業につくことができるから」で説明できるようです。

 

しかし、よく計画された観察研究でも、因果関係について論じるには限界がありますし、介入をした場合の効果が、しなかった場合と比較してどのくらいかも正確には分かりません。なぜ、教育に実験が必要なのか?教育の効果を検証するには、ランダム化比較試験が必要となります。ランダム化比較試験という「実験」を駆使して、教育経済学(注)は「どういう教育が成功する子供を育てるのか」という強力なエビデンスを示すことができます。教育について、もっと実験(ランダム化比較試験)をしなくてはいけないと思います。

 

注:「学力」の経済学(中室牧子、デイスカバー・トウエンテイワン)