MRIで初めてみつかる「かくれ」脳梗塞

多くの疫学研究から心血管系疾患の危険因子や認知症になりやすくする(悪い)生活習慣などが分かってきました。しかしながら、脳卒中を発症していないヒトにも潜在性脳梗塞は一定数存在しますし、たまたま症状がないだけで動脈硬化の程度は脳卒中患者と同じくらいということはよくあることです。脳梗塞の潜在性発症(変な日本語ですが)は症候性脳梗塞発症の少なくとも5倍はあるという報告もあります。したがって、脳MRI画像なしでは潜在性病変の危険因子や、その病変が認知機能に及ぼす影響の正確な評価は困難です。

 

画像診断技術の進歩(MRIの普及)により、明らかな症状が無い「無症候性脳梗塞が普通に検出されるようになりました。無症候性脳梗塞は脳内小血管の動脈硬化によるラクナ梗塞と同じもの(たまたま症状が出ないだけ)です。症候性の脳梗塞はサイズが大で、高血圧やアルコール依存症が多いという報告もあります。ハッキリとした症状は出さないから無症候なのですが、まったく影響なしというわけでもないので、「潜在性脳梗塞の方が学術的には正確でしょう。「かくれ脳梗塞というくだけた言い方もありますが、MRIが普及した今日では逃げもかくれもできません。

 

潜在性脳梗塞があると将来的に認知症になりやすいことが示されています 。一般住民(平均年齢74.6歳)では、平均5.2年間の追跡期間中に20.9%にMRI上の脳梗塞の新規発症がありましたが、脳卒中の症状が出たのは6.8%だけでした。潜在性脳梗塞が新規発症した群では認知機能の低下が急速に起こり、認知症発症のリスクは1.7倍でした。つまり潜在性脳梗塞が増加することが認知機能低下や認知症の発症を引き起こすということです。