健康的な生活習慣と健康寿命

世界的に寿命は伸びています。しかし、寿命(長生き)だけではなく、糖尿病や心血管疾患、ガンなどの疾患がない状態での寿命(健康寿命をのばすことが重要です。疾患のない女性看護師と医療従事者の男性を30年前後追跡した米国での研究では、4〜5の良い生活習慣を持っている場合は、50歳からの健康寿命は女性で34.4年、男性で31.1年と8〜10年延長していました。日本からの報告では、地域在住の住民の健康寿命は男性82.8歳、女性86.8歳でした(注)。ボランティアや趣味、町内会などの社会活動への参加が1つでもあると約3年、3つあると約5年健康寿命が男女共に延びていました。

 

注:WHOによると、2019年の日本の健康寿命は男性72.6歳、女性75.5歳で、確かに世界1位です。引用した論文の数値とは異なりますが、対象集団(健常高齢者)の差によるのではないかと論文中に記載されています。

 

UKバイオバンクの報告では、4つの危険因子の集積(身体活動度低下、野菜と果物の少ない消費量、飲酒、座ってばかりの生活)により心血管疾患の発症リスクは飲酒単独と比較して3.29倍、身体活動度低下と野菜と果物の少ない消費の2つに飲酒が加わって、悪い生活習慣が3つとなると(2つの場合と比べて)リスクは25.18倍でした。複数の危険因子が集積すると、リスクは相乗的に増大し大変危険です。メタアナリシスでも、よい生活習慣がある場合は心血管疾患のリスクは0.37まで低下していました。特に30〜40歳代での生活習慣が良いと効果は大きく、健康な若い時期から生活習慣を良くしておくことが重要です。

 

以上のように、中年期から健康的な生活習慣を順守すれば、健康寿命を8〜10年ほど延ばすことができます。しかし、OECD11カ国からの28研究のシステマティックレビューによると、スウェーデンなど少数の例外を除き、寿命の延長に健康寿命は追いついていません。長生きするようになっても、健康問題や病気をかかえて生きる期間が長くなっています。