サプリは認知症を予防しないと思うのだけど----

サプリ、健康食品、認知症をキーワードとしてググってみると、実に様々な広告が出てきます。例えば、ご家族のケアには記憶力を維持する機能性表示食品の「〇〇〇〇EX」。/ 青魚のサラサラ成分DHAEPAを600 mgも贅沢配合!ヨーロッパでその価値が研究されている「イチョウ葉エキス」に加えて、人間に不可欠なDHA、αアルファ−リノレン酸を豊富に含有する「アマニ油」「シソ油」と「ビタミンE」が複合的に働きます。/ すべての世代にうれしいビタミンを1粒に閉じ込めました。/ 大豆に含まれるレシチン神経伝達物質をつくり、認知症を劇的に改善しているという事実。(筆者注:そんな事実はありません)/ 〇〇の「ホスファチジルセリン」は、大豆約1,222粒分ものホスファチジルセリンを配合しました。冴えた毎日に欠かせないDHAと、さらさらな流れをサポートするEPAもプラス、などなどやりたい放題です。

 

店頭で売られているサプリ(注)は認知症を予防するか? 全く効果なし。以上!です。もう少し丁寧にみてみると、データベース検索において11,087件の論文がヒットし、タイトルと抄録を読んで9,487論文を除外、手作業で見つけた185論文を加え、そのうち1,415の論文を読み込んで、最終解析すべく残ったのが56の研究でした。その56研究全てにおいてサプリによる認知症予防効果はありませんでした。やれやれという感じでしょうか。

 

—と書いてから約5年がたちましたが、状況はあまり変わらないようです。

認知症は予防する時代となってきているので、サプリで認知症が予防できるかは興味深いところですが、かなり否定的であることは上述したとおりです。健常高齢者を対象としたビタミンB群(B1、B6、B12、葉酸)の認知機能におよぼす効果を検証したメタアナリシスによると、ビタミンB群による認知機能低下の抑制作用はみとめられませんでした。他のメタアナリシス(対象はMCIと健常高齢者)では、ビタミンB群によって全般的認知機能に改善がみとめられましたが、情報処理速度、エピソード記憶、遂行機能には有効性をみとめませんでした。全般的認知機能に改善がみとめられたといっても、その効果は小さく、(社会全体に対する効果は別としても)個人に対して明らかに「効く」とは考えにくいようです。注意すべきは、この2つの論文があつかっているのは「認知機能」であって、「認知症の発症」ではないことです。サプリによる認知症の予防効果はないのです。

 

注:評価されたサプリは、オメガ3脂肪酸、大豆、銀杏の葉エキス、ビタミンB群、ビタミンDとカルシウム、ビタミンE、ビタミンCとベータカロテン、マルチビタミンです。