トマトが脳卒中を減らす?

リコピンはトマトに多く含まれるカロテノイドで、強力な抗酸化作用[注1] を持っています。この抗酸化作用のためリコピン動脈硬化や心血管系疾患を予防すると考えられています。比較的最近、フィンランドリコピンなどの抗酸化物質の血中濃度脳卒中リスクとの関連について、45〜65歳の男性1,031人を中央値で12.1年追跡して検討されています[Ref. 1] 。検査前3日間は飲酒をせず、12時間は喫煙しないよう指示され、30分間の安静臥位の後採血をして、血清リコピンなどを測定しています。結果は、血清リコピン濃度が最も高い群(4分位)では最も低い群と比べて脳梗塞のリスクを59%減少(ハザード比0.41)させていました[注2] 。有意差があったのは最も高い群と最も低い群の間のみでしたが、よくみてみると血清リコピン濃度が最も低い群のみが他の3群と比べて際立って脳卒中発症が多いという結果でした。アルファカロテンやベータカロテン、アルファトコフェノール、レチノールの血中濃度脳卒中のリスクには関連がありませんでした。この報告を含む7つの研究のメタアナリシスでもリコピン脳卒中のリスクを(特に男性において)有意に低下させていました[Ref. 2] 。食事からのリコピンよりもリコピン血中濃度の方が脳卒中リスクと関連がありましたが、これは食事に関する質問票では正確にリコピン摂取量を算出できていないという問題があるのかもしれません。いずれにせよトマトを多く食べると(トマトをあまり食べない男性のトマト摂取量が増えると)脳卒中リスクを減らすことができるようです[注3] 。

 

注1:リコピンには活性酸素(一重項酸素)を消去する作用があり、リコピンの抗酸化作用はアルファトコフェノールの10倍以上、ベータカロテンの倍以上と言われています。

注2:コックス比例ハザードモデルを用いて、年齢・検査した年・体格指数・収縮期血圧・喫煙・LDLコレステロール・糖尿病・脳卒中の既往により多変量調整した結果です。

注3:もちろんトマト以外の果物にもリコピンを多く含むものがあるので、他の果物の評価も必要です。またトマトの調理法によってもリコピンの量や活性が変化することなどにも注意すべきでしょう。

Ref. 1: Karppi J, Laukkanen JA, Sivenius J, Ronkainen K, Kurl S. Serum lycopene decreases the risk of stroke in men: a population-based follow-up study. Neurology2012;79:1540-1547. 

Ref. 2: Li X, Xu J. Dietary and circulating lycopene and stroke risk: a meta-analysis of prospective studies. Sci Rep 2014;4:5031.