女性は認知症になりやすい なんで?

アルツハイマー病が女性に多い理由として、男性より女性の方が長生きするからというだけではないようです。女性のアルツハイマー病リスクを上げるものとして、閉経にともなう神経内分泌系の変化があると考えられています。閉経は平均51歳(88%は40〜58歳)で起こり、40歳未満の閉経は早発閉経とされています。閉経への移行期には月経周期のばらつきが大きくなり、卵巣からのエストロゲンプロゲステロン分泌が減少します。認知症予防効果に関するホルモン補充療法については一定の見解は得られていませんが、閉経から5年以内に開始すれば良い結果が得られ、治療開始が遅れると結果は良くないという意見もあります。

 

アルツハイマー病のバイオマーカーとしての脳画像(脳萎縮、糖代謝、脳アミロイド沈着)の解析により、アルツハイマー病の発症危険因子の性差について詳細に検討した報告があります。対象は40〜65歳の認知機能正常の121名(女性85名、男性36名)で、脳画像解析とともに認知機能テスト(記憶や課題処理速度、言語など)、血管危険因子の評価、うつの評価、閉経の状態、地中海食的食生活の度合い、身体活動度と知的活動度について解析しています。結果に影響する可能性のある因子を補正した上で、女性は男性よりアミロイドの沈着が多く、糖代謝が低く、灰白質と白質の容積が小さいという結果でした。つまり女性の方が脳画像から見て「アルツハイマー的」であるという結果です。閉経を契機にアルツハイマー的傾向が加速され、生殖活動に関連する生物学的活性が低下すると、アルツハイマー病のリスクが上昇すると推察されています。