女性の脳は守られている

出産数が5以上の女性では潜在性脳梗塞が少ないことが観察されています[Ref. 1] 。一般的に女性の脳梗塞の頻度は男性の3分の2くらいですが、潜在性脳梗塞についても同様の結果でした。その理由としては、まず女性では飲酒や喫煙が少ないことがあります(研究期間の女性[注1] では特に喫煙の頻度が1.5%と極めて少なかった)。しかしながらロジスティック回帰分析により飲酒や喫煙などの血管危険因子を多変量調整しても、出産数が5以上の女性では潜在性脳梗塞が少ないという結果は変わらなかったので、生殖活動に関連した生物学的特性によって女性は脳梗塞から保護されていることが示唆されました。一方、最終出産年齢は高いほど潜在性脳梗塞が多くなる傾向がありました。つまり「多産は良いが、高齢出産は良くない」ということのようです。この結果は脳の動脈硬化に関するものですが、「女性の脳が守られている」ことの1例と考えていいのではないでしょうか。

 

注1:誕生年と出産数の関係を見てみると、出産数は1910年生まれの女性では平均4人であるのに対して、近年に近づくほど出産数は減少し、1950年生まれでは平均2人となっていました。「出産数が5以上の女性では潜在性脳梗塞が少ない」という結果は主に1935年以前の誕生年のヒトのデータによるものです。