老化は足から

「足が衰える」ことは、単にからだだけの問題ではなくて、脳の働きにも関係している。からだの問題としては、たとえば糖尿病や大脳白質病変があると歩行速度が遅くなることが観察されている [Ref. 1] 。さらに、足し算をしながら歩くという「二重課題歩行」では—加齢に加えて—記憶力低下(という脳の問題)が歩行速度を遅くしていた。

 

「日常生活が自立し、4分の1マイルを歩くことができ、休まずに階段を10段上ることができる」一般住民193人(平均年齢73歳)の「普通に6メートル歩く」のに要する時間について、14年間追跡した報告がある [Ref, 2] 。最終判定時に104人に認知機能障害(認知症と軽度認知機能障害を合わせたもの)があった。歩行速度低下に関連していたのは、認知機能障害と右の海馬萎縮であった。歩行速度低下(厳密にいうと速度低下の傾斜が加速すること)は認知機能障害に先行する(予言する)かっこうになっていた。

 

普通に歩く速さが年々遅くなってきたら認知症の前ぶれかもしれない。

 

Ref. 1:Hashimoto M, Takashima Y, Uchino A, Yuzuriha T, Yao H. Dual task walking reveals cognitive dysfunction in community-dwelling elderly subjects: the Sefuri brain MRI study. J Stroke Cerebrovasc Dis 2014;23:1770-1775.

 

Ref. 2: Rosso AL, Verghese J, Metti AL, Boudreau RM, Aizenstein HJ, Kritchevsky S, Harris T, Yaffe K, Satterfield S, Studenski S, Rosano C. Slowing gait and risk for cognitive impairment: The hippocampus as a shared neural substrate. Neurology 2017;89:336-342.