寝ても寝なくても認知症になる?

久山町研究 [注] では、睡眠時間が5時間未満と10時間以上で認知症が増加していました。別の研究では、短い睡眠時間と寝つくまでに30分以上かかることが認知症発症に関連していました。腕に装着したスマートウォッチの加速度センサーにより睡眠の質を測定した研究では、調査開始時の睡眠の質(入眠後の覚醒、睡眠とは考えられない体動、睡眠中1分以上じっとしていない時間の割合など)が悪いと、5年後の認知機能低下の程度が大きいという結果でした。短いだけでなく、睡眠時間は長くても認知症が増加することがしばしば示されています。この認知症発症のわずか数年前に観察される「長い睡眠時間」は認知症発症の原因というよりも、認知症一歩手前の(潜在的な)脳の異常」によってもたらされた「結果」と考えた方が妥当かもしれません。

 

注:久山町研究は1961年より福岡市近隣の久山町において、九州大学第二内科(現、病態機能内科学)によって開始された一般住民を対象とした疫学研究です。当初は脳卒中や高血圧などの血管危険因子の研究が主目的でした。