脳卒中にならない食事

脳卒中予防のための食事に関する時宜を得た論評がStroke誌2017年10月号に出ています[Ref. 1] 。13の観察研究と1つのランダム化比較試験のメタアナリシスの結果から地中海食に準じた食事によって脳卒中発症のリスクが約30%減少することが示されました。果物や野菜の摂取量が1日200 g増加するごとに脳卒中のリスクが16%減少していました。ポテトは主にデンプンを含み、血糖をかなり上昇させますが、脳卒中リスクとは有意な相関はありませんでした。炭水化物の総摂取量と脳卒中リスクも相関はありませんでしたが、血糖指数(血糖上昇速度)が高い食物は高い脳卒中リスクと相関がありました。地中海食へのナッツの補充は脳卒中リスクを46%軽減したのは前述したとおりですが、11の観察研究では高摂取群と低摂取群との比較で差が出るものの、1単位増えるごとのリスク軽減は有意差には至りませんでした。豆の摂取量と脳卒中リスクもどっちつかずでした。地中海食へのオリーブオイルの補充が有益効果を示したのも前述したとおりですが、これとギリシャとフランスで行われた研究を加えたメタアナリシスでは、オリーブオイルが1日25 g増加するごとに脳卒中のリスクは24%減少していました。乳製品に関して、牛乳の摂取量が多いと、アジアでは脳卒中のリスクが軽減していましたが、欧米ではそうではありませんでした。チーズやヨーグルト、バターなどは脳卒中リスクと有意な相関はありませんでした。週に2単位魚の摂取量が多いと脳卒中のリスクは4%減少しますが、魚の脂であるオメガ3脂肪酸の補充によって脳卒中リスクを軽減することはできませんでした。はタンパクや必須脂肪酸、微量栄養素が豊富ですが、コレステロールも多い(1個につき約200 mg)ことから心血管系疾患を引き起こすのではと非難されていましたが、今日では1日1個までの卵は脳卒中とは無関係とされています。ベーコンやハム、ソーセージなどの加工肉には塩分や亜硝酸塩が多く、脳卒中のリスクを13%上昇させます。また、加工してなくても赤みの肉脳卒中のリスクを11%上昇させます。砂糖で甘くした飲料や人工甘味料入り飲料でも脳卒中リスクを上げることが示唆されています。一方、(もちろん観察研究のみですが)1日3-4杯のコーヒーや1日3杯の紅茶脳卒中のリスクを20%ほど減少させていました。コーヒーや飲酒、チョコレート、(乳製品やサプリと関連した)カルシウムと脳卒中の関係については別途詳しく見ていきたいと思います。

 

まとめると果物と野菜が多く、食塩と加工肉が少ない食事が最も脳卒中を予防すると言えそうです。地中海食に準じた食事の有益性もしばしば示されています。ただし「食事」の評価ですから、どうしてもほとんどの研究が観察研究であるため因果関係について確証は得られません。健康的な食事をしているヒトは身体活動度が高く、喫煙しないことが多く、適性体重を保っていることなどが十分考えられるからです。もちろん観察研究とは言っても適切に諸条件を多変量調節していますが、未知の因子や測定できなかった因子はどうしようもないからです。

 

Ref. 1: Larsson SC.Dietary Approaches for Stroke Prevention. Stroke2017;48:2905-2911.