脳の健康のために (1) 脳を疲れさせない

マインドフルネス瞑想は、デフォルト•モード•ネットワークの暴走にブレーキをかけ、脳がむだに疲れないようにしてくれるので、脳の休息法としてオススメです。ヨガには心血管系疾患の発症リスクを減少させる効果が顕著でした。楽天家には心理的な利点が多い…

脳の健康のために (2) 健康的な食事

てっとりばやく体重を減らそうとするなら糖質制限が効果的ですが、長い目でみたら地中海食の方が良さそうです。オリーブオイルやナッツ、果物と野菜が多く、魚や鳥肉が多い一方では赤身の肉や加工肉が少なく(加工肉が少ないと減塩にもなります)、炭水化物…

脳の健康のために (3) 血管危険因子の管理

多量飲酒では海馬が萎縮し、節度ある適度な飲酒なら脳に良い(脳萎縮が軽い)ということはありませんでした。1日に20本喫煙した場合の(虚血性心疾患や脳卒中の)リスク増大分の40〜50%相当が、たった1日1本の喫煙で生じるので、タバコは本数が少なくても…

脳の健康のために (4) 脳の潜在性病変にまつわる話

無症候性脳梗塞はおおざっぱに言って、60歳代では10人に1人、80歳代では10人に3人ほど見つかります。無症候性脳梗塞の危険因子としては高血圧が主なもので、ほかに糖尿病や慢性腎臓病、飲酒、喫煙などがあり、一般的な脳卒中の危険因子と同じです。潜在性脳…

脳の健康のために (5) アパシー、生活不活発病、認知的フレイル

認知機能障害や感情的動揺、意識障害などによらない(特に原因がハッキリしない)やる気の低下をアパシーと言います。「できるけどやらない」状態(アパシー)が続くと、次第に脳の機能が衰えて認知機能障害の状態、つまり「やりたくてもできない」状態とな…

脳の健康のために (6) 認知症の予防

高齢者の人口が増加しつづける社会では、当然のように認知症患者の数(有病率)は増加しますが、認知症の発症率は減少しているという報告があります。認知症の発症率が減っていれば、認知症の予防ができている(もしくは予防可能性がある)ということです。…

脳科学とダイエット

ダイエットの99%は失敗するというというデータがあります。5つの質問に答えることで、食物依存症のリスクを自動的に計算してくれるオンラインの感受性クイズ(www.FoodFreedomQuiz.com)によると、私の点数は2点で食物依存症になる危険性は低く、このクイ…

身体的虚弱(フレイル)と認知的フレイル

加齢に伴う身体機能低下を象徴的に示す特徴として「老化は足から」と言います。たとえば糖尿病や大脳白質病変があると歩行速度が遅くなることを私たちは観察しています[Ref. 1] 。さらに、「足が衰える」ことは単にからだだけの問題ではなくて、脳の働きにも…

腎臓の機能が低下すると認知症になりやすくなる

最近、腎臓は脳の働きにも影響を及ぼすことが明らかとなり、注目されています。慢性腎臓病は一般住民の8〜16%にみとめられ、脳梗塞や認知症とも多くの危険因子(高血圧や糖尿病、潜在性脳梗塞などの脳小血管病)を共有しています。認知症発症リスクと腎機能…

ビンスワンガー病について

ビンスワンガー病というのは広汎な白質病変が特徴的で、多発性のラクナ梗塞を伴う血管性認知症の一種です。白質病変とラクナ梗塞の組み合わせということでは、血管性認知症もしくは血管性認知障害の典型的な病型とも言えます。自験例を提示します。この症例…

多価不飽和脂肪酸と脳梗塞の予防

脂肪酸は脂質を作っている成分で、その化学構造に二重結合がない飽和脂肪酸、二重結合が一つの一価不飽和脂肪酸、二重結合を二つ以上含む多価不飽和脂肪酸に分類されます。多価不飽和脂肪酸は二重結合の位置によってn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸に分けられてい…

甘い罠ー人工甘味料について

ジェイソン・ファンの著書「トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ」[注1] では、糖分の危険性が繰り返し指摘されています。いわく(肥満の対策として)「添加糖の摂取を減らす」や「精製された穀物の摂取を減らす」、グルコースよりも「フル…

片頭痛と脳卒中

2018年6月にサンフランシスコで開催されたアメリカ頭痛学会での片頭痛に関する話題が紹介されています[注1] 。その中には、並存する健康問題からみて片頭痛が明確な8つ亜群に分類できること、ひどい症状の回数や薬の使用過多、慢性の片頭痛、前兆などが並…

見つけてはいけない!

磁気共鳴血管造影による非破裂動脈瘤[注1] のスクリーニングを一般住民において行なうことは現状では正当化されません。その理由として、(1)一般住民を磁気共鳴血管造影によりスクリーニングすれば約2%に動脈瘤が発見されますが、クモ膜下出血の発症頻度…

いったい卵は1日に何個まで食べてよいのか?

卵が目の敵にされてきたのは、卵には多量のコレステロールが含まれるからです(大きめの卵(50 gくらい)のコレステロール含有量は186 mg)。しかしながら、食事でとったコレステロールによって直ちに血中コレステロールが増加するわけではなく、卵は栄養価…

コーヒーは脳の健康にどう影響するのか2

ヨーロッパの10カ国で、健康—全死亡と疾患別死亡—に及ぼすコーヒーの影響について、451,743人を平均16.4年追跡調査した報告があります[Ref. 1] 。コーヒーを多く飲む群(多い方からの4分位)では、全死亡は1割ほど減少していました [注1] 。意外なことに…

トマトが脳卒中を減らす?

リコピンはトマトに多く含まれるカロテノイドで、強力な抗酸化作用[注1] を持っています。この抗酸化作用のためリコピンは動脈硬化や心血管系疾患を予防すると考えられています。比較的最近、フィンランドでリコピンなどの抗酸化物質の血中濃度と脳卒中リス…

脳卒中にならない食事

脳卒中予防のための食事に関する時宜を得た論評がStroke誌2017年10月号に出ています[Ref. 1] 。13の観察研究と1つのランダム化比較試験のメタアナリシスの結果から地中海食に準じた食事によって脳卒中発症のリスクが約30%減少することが示されました。果物や…

地中海食で脳の萎縮をくい止める

地中海食や同様の「健康に良い食事」が脳萎縮を軽減するという報告があります[Ref. 1-4] 。地中海食スコアにより評価した「地中海食」により灰白質も白質も容積が大きく、この効果は主として多い魚の摂取量と少ない肉の摂取量によるとした論文(断面調査)[R…

偶然見つかる脳の微小出血

脳微小出血が実はかなり有害なものであると強調されてきたのは2009年ごろからではなかったかと記憶しています。それまでは高齢者の数パーセントに偶然見つかるどちらかというと無害なものとされていましたが、最近では認知機能低下にも強く関与することが示…

高血圧がアルツハイマー病の原因?

高血圧の治療をランダム化すると、対照群(未治療群)で必ず脳卒中が増加するのでランダム化比較試験は承認されません。ランダム化比較試験ができない状況下では高血圧が認知症の原因となるかどうかを明らかにすることはできません[Ref. 1] 。ここで古典的な…

なぜ統計学が最強の学問なのか?

なぜ統計学が最強の学問であるのか?西内さんの本[注1] から盛大に引用します。その理由は、「人間の制御しうる何物についても、その因果関係[注2] を分析できるから」であり、この統計学の汎用性は、どのようなことの因果関係も科学的に検証可能なランダム…

認知症になりやすい遺伝子を持っているか知っておいた方が良いのか?

認知症のリスクを高くする遺伝子—アポリポプロテインε4遺伝子—検査を日常診療に取り入れるべきなのでしょうか。取り入れた方が医療者のみならず、患者(被験者)にとっても良いことなのでしょうか?この問題提起に対して論じた論文があります[Ref. 1] 。医療…

教育と脳

大島潜居となった西郷吉之助はこの機会に書物を読むことにしました。書物を読みすぎると何事に対しても決断できず「迷ってばかりいる人間になる」のではないかと大久保一蔵は心配しましたが、大久保の父次右衛門は次のように述べたそうです。「そげん人間は…

野菜と果物と脳の健康

野菜や果物を多く食べると健康に良いと一般的に信じられています。高所得から低所得までを含む18カ国、35から70歳までの135,335人を平均7.4年追跡した観察研究があります[Ref. 1] 。果物や野菜、豆などの摂取量が多いと総死亡率と心血管疾患以外による死亡率…

メタボリックシンドロームと炎症と動脈硬化

つまめる脂肪—皮下脂肪—はそれほど悪くなく、つまめない脂肪—内臓脂肪—が悪いことがわかってきました。内臓脂肪の増加はインスリン抵抗性[注1] を引き起こし、虚血性心疾患や脳卒中などの原因となります。内臓脂肪の増加による中心性肥満を主たる病態とする…

睡眠障害と認知症

ぐっすり眠ることが大事なことは直感的に理解できます。睡眠不足は生活の質をそこない、肥満や高血圧、心血管系疾患など生活習慣病になりやすくします。最高の睡眠にとってもっとも重要なことは「最初の90分」をしっかり深く眠ることがです。「最初の90分」…

地中海食は脳卒中を予防する—観察研究

英国で行われた観察研究でも地中海食の脳卒中予防効果がみとめられています。40歳から79歳までの一般住民23,232人を17.0年間追跡し、地中海食スコア[注1] と脳卒中発症の関連をコックス比例ハザードモデル[注2] により解析しています。その結果、地中海食…

健康的な食事による海馬萎縮の防止

10,308人のコホートからランダムに選択した550人(最終解析は459人)について、半定量的食事質問票により食事の「健康度」を評価し、約11年後の海馬容積をMRIにより定量化しています[Ref. 1] 。食事スコアが1標準偏差「よくなる」毎に海馬容積は92.5 mm3(…

アミロイドβ抗体によるアルツハイマー病の治療

アミロイドはアルツハイマー病が発症するかなり前から脳内に沈着し始め、その後の病気進展のきっかけとなります。したがってアミロイドに対するモノクローナル抗体を投与して、脳内のアミロイドを除去すれば、アルツハイマー病の発症を抑えることができると…